2018
01.31

セルサイドは、残業ルールが緩い独立系M&Aハウスから選ぶべし

M&Aのチーム管理

ユニークな強みがあり面白い会社を売却する場合に特に気をつけていただきたい点が『M&A助言会社の選び方』です。今回は、一定期間内一定以上の業務時間投入少数担当者でやり切ってくれるM&A助言会社を選ぶ重要性についてご説明したいと思います。

一定期間内に一定以上の投入時間を少数担当者でやり切ることが必要となる理由は、ユニークであるがゆえに開示情報の作成、提案方法の考案、M&Aストラクチャーの考案といった最適なM&A助言のための業務量が(飛躍的に)多くなりがちという点です。

M&Aの着手金は通常僅かな金額であり、多くの担当者を充てることはできません。しかし、まず、「ターゲット企業を正確に深く広く理解する」という当たり前のプロセスを経なければ、最適な相手選び高品質の情報開示といった成果を左右するM&A助言業務の基盤が脆弱なまま、M&A交渉をスタートしなくてはならなくなってしまいます。かといって、多額の着手金を支払う余裕のあるセルサイドも稀でしょう。年収1,000~1,500万円以上の高度専門人材に、500~1,000時間以上の準備作業をさせるために必要なコストが、ユニークな強みを持つ面白い会社のM&A売却にかかる着手金として受領したい金額です。残念ながら、M&Aの成否すら不確かな段階で、この費用負担を覚悟してくれるセルサイドは、かなりの規模があり、十分な余裕がある会社だけで、なかなかお目にかかることがありません。

 

どの程度の準備時間が必要か?

弊社の場合、ターゲット企業(売り手企業)についてのセルサイド(売り手)としての自己企業精査(セルサイドDD)や、企業価値向上コンサルティングを実施しない場合においても、市場競合事業組織財務の分析、事業計画を含む開示資料の準備やバイサイド候補の調査・探索のための時間として、平均して1,000時間程度を投入しています。

これをEBITDA(償却前営業利益)が5億円未満の中小企業のケースでは、通常、1名の担当者2か月以内にやり切ります。2カ月は60日ですから、1,000時間÷60日=1日平均16.6時間(当然休みなし)となります。完全に労基法違反の時間外労働時間となってしまいますが、時間外労働規制がかからない取締役が、一部単純作業を除き、すべての重要業務を担うことで規制を遵守するしかありません。そうしなければ、生き生きとした説得力のあるM&A提案ができなくなってしまい、バイサイドから様々な質問を浴びせられても的確に回答できなくなり、結局、交渉期間が長引いたり、誤解による優良候補の離脱、不利な条件交渉につながることが経験上明らかだからです。

ここで、残業規制のかかる従業員(労働者)が、M&A助言の主担当者になるとどうなるかというと、同じく2か月で準備を終えるとすると2名以上を担当者として置かねばならなくなり、着手金が2倍必要になります。さらに、担当者を2名にすると、すべてを理解している担当者が1人もいなくなってしまうということも大問題です。

時間外労働は社会的に抑制すべきという風潮ですが、M&A助言は本来、医者と同じ「プロフェッション」であるべきであり、ターゲット企業の将来、役員・従業員の将来、オーナー様の長年の苦労の結晶の実現を大きく左右する責任の重い仕事なわけですから、そもそも残業ルールの単純な適用はふさわしくない業務であると考えています。従業員(労働者)を担当者にすると、制度的には規制対象となってしまい、結果としてクライアントであるセルサイドオーナー様に最高のサポートができなくなってしまうということになりかねません。「終業時間が来たので家に帰ります」と言って手術の最中に放り出して帰ってしまう医者には頼みたくないのと基本的に同じことです。

自然人の命を預かる医者が過酷な労働環境でも仕方なしとされているのですから、法人の命を預かるM&Aバンカーも過酷な労働環境に耐えなければならないはずです。

 

企業価値向上コンサルティングの有効性と成功させる条件

また、高値売却を目指す上でも投入時間というものは非常に重要な要素となります。上記の1,000時間という相当量の時間を投入すると、ターゲット企業についてかなりの知識を得られます。その中で、ターゲット企業が環境変化に適応しておらず潜在価値を実現できていない領域が発見されることが多々あります。

弊社の場合、メンバー全員が自ら会社を興した経験のある者のみですので、財務面のみならず、商品開発マーケティング組織運営等の多くの経営領域について、一定以上の経験と知識を有していますから、かなりの確率で欠陥を発見でき、治癒するための方法論も考案できるわけです。さらには有するリソースを別分野で活用するなどの成長の気づきを得られることも多々あります。

このような企業価値の向上のための切り口が得られた場合、かつ、改善にかかる時間が許容範囲内で、かつ、セルサイドオーナーが最高条件を目指すことを重視する場合には、弊社独自の企業価値向上コンサルティングをご提案しています。(もちろん、そのような大掛かりな改善活動をせずに、すぐにM&A交渉に突入することも自由です。オーナー様のリスクの捉え方、成果に向けたプロセスの考え方は人それぞれですので、状況次第でご検討いただいている選択肢の1つです。)

さて、このような事前の改善活動をするとなると、さらに多くの時間がかかるのですが、長ければよいというわけではありません。短期間で一気に仕上げ、その成果を現実の財務的成果として確認しなければ、M&Aの目的に貢献しないということになりかねません。そのため、このような企業価値向上コンサルティングをご提供する場合、ますますハードワークが必要となります。ここでも残業ルールは完璧に無視しなければなりません。しかし、そういうプロフェッションを自分の仕事として選択した以上、当然の職責ですし、それが将来のターゲット企業の成長につながると思うなら、また、M&Aで飛躍した姿を見られると思うなら、楽しくて仕方がないと思うような人が担うべき仕事とも言えるのですね。

 

 

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