2018
02.02

M&Aによる会社売却の成功パターン:なぜM&Aの前に改善活動をすると評価額がグっと上がるのか?

M&Aのプロセス

M&Aでの会社売却で少しでも高い価格を目指したい方にオススメしている事前準備作業があります。

それは、まずM&A・経営・ファイナンスのプロに「M&A的に改善すべきポイント」がないかどうかを「健康診断」してもらうことです。

そして、その診断結果に基づいて、改善できるものはM&Aを実行する前に実際に改善しておきし、M&A実行前(単独経営)では改善することが難しいものなら、少なくとも具体的な改善方法を整理して客観的に説明できるように準備しておくという作業です。

この改善活動は、多くの非上場オーナー系企業にとって有効であり、売却金額を(大幅に)上昇させる可能性を秘めていますので、ぜひ検討いただき、M&Aによる会社売却で大成功してもらいたいと思ってます。

 

なぜ多くの非上場オーナー系企業に改善すべき点が残っているのか?

多くのM&Aのターゲット企業(売り手企業)は、上場していない非上場企業であり、かつ、大半の株式を創業家で保有するオーナー系企業であると思います。

このような企業のうち、特に高額売却の可能性がありながら、一方で相手や方法次第で安値売却のリスクも高いのは、ユニークな強みを持つ面白い企業なのですが、実は、そういう会社ほど改善ポイントが眠っているケースが多いのです。

企業経営は、与えられた環境に適応すること、半歩先を歩むことで競合との差別化を図ることが、サバイバルし、超過収益力を確保する上で肝要ですが、いったんユニークな強みを実現できた企業は、その強みがあるがゆえに、時間の経過とともに生ずる環境変化の一部には適応できておらず、改善余地を作ってしまっているケースが非常に多いのです。特に、グローバル化、IT化、スマホの浸透、SNSの急速な発展、FA化、AI化、高齢・少子化など、ここ5~10年の外部環境の変化は、それ以前とは比較にならないスピードで進行していますから、そういうズレモレが生じやすいということでしょう。いかに優秀な経営者であっても、何十年も完璧な仕組みを維持し続けることは極めて困難なのです。変革加速時代ですから、企業価値に大きなインパクトを及ぼす経営手法の一部において変革スピードにキャッチアップできていない方が一般的になっています。

また、非上場企業は、株式上場市場に参加していないため、外部の株主、証券会社のアナリストやマスコミ等といった「外部者からの建設的批判」を受ける機会が乏しいものです。さらに、オーナー系企業になると、重要事項をオーナー社長1人で決められるガバナンス体制であるケースが多く、こういったズレやモレに気づくことなく、部下への一方通行の指示出し、部下からの報告の妄信の中で時間が経過していくというパターンに陥るのだと思っています。人間と組織の原理的な関係上、避けて通れないものであり、ときどき意識して見直す習慣が必要なのでしょうが、多くのオーナー社長にとってはそんな時間はないのでしょう。

つまり、外部環境が高速変化している中で、たった1人で企業のかじ取りをしていて、相談できる人がいない(ましてやM&A的な評価という観点ならなおさら)わけですね。

そのため、オーナー社長個人得意分野については第一人者にとどまっていられたとしても、苦手分野についてはアンテナすら張っておらず、変化に適応できていないケースが頻繁に生じてしまうのです。オーナー社長は非常に優秀な人物であることは間違いないと思いますが、万能タイプというよりも一部が突出しているがゆえに成功したというケースも多いでしょう。ご自身の苦手分野を見極め、環境変化を半歩先取りして、その分野の専門家を経営の柱に据えていない限り、時代遅れの経営パーツを内在している可能性が濃厚なのです。

 

要改善ポイントが残っていると売却価格はどのように評価されるか?

要改善ポイント、つまり、企業価値評価上の欠陥が残っているままで具体的なM&A交渉に入るとすれば、バイサイド(買い手)はどのように評価するでしょうか?

ターゲット企業が、M&A市場で引く手あまたの人気業種であるケース等を除けば、バイサイドはこのように評価するはずです。

「この改善ポイントは高確率で改善できそう。ということは、買収すれば利益を上乗せできそう。しかし、本当にうまくいくかは不透明なので、改善できたと仮定した場合のEBITDA(減価償却費控除前営業利益)をそのまま適用して株式価値評価するわけにはいかない。この企業を買収しなければマズイわけではないのだから、低めの金額で買収できればラッキー。それ以上の金額を要求されたら手を引こう。」

これがありがちパターンです。つまり、改善できるはずの利益は完全に無視された価格でしか売れないというパターンです。安全重視姿勢の企業が多い日本において、セルサイドが乗り越えなければならない壁となります。

M&Aにおいて、理屈上は改善できるはずでも治癒されていない欠陥について、改善できた場合の効果を加算評価してもらうのは、不可能ではないけれど結構大変です。

逆に言えば、実際に改善しておけば、その改善効果を無視するバイサイドは相手にしない、改善効果を含んだ価値で評価してくれるバイサイドに売ればよいということになります。

つまり、改善とその確認に要する期間を例えば半年程度としますと、半年という短期間を境として、創業来数十年等の長期間の成果(実際の売却額)に大きな差が生じる可能性が高いということでもあります。

<事例>
業種・成長見通し・差別化維持可能性等を考慮するとEBITDA倍率6倍が妥当なターゲット企業がいます。このターゲット企業の足元の売上は10億円、EBITDA(償却前営業利益)は5,000万円です。このオーナー社長は、広告媒体のスマホ化の流れに乗り遅れ、旧来型媒体に依存し続けてしまい、広告宣伝費が明白に過大な状況です。また、数カ月の改善活動によって、5,000万円のEBITDAを1億円まで改善できる可能性が高い状況です(つまり旧来型広告として5,000万円以上を過大に負担している状況)。今すぐ会社売却してしまうと、企業価値は3億円(=5,000万円×6倍)程度となってしまいますが、半年後に改善効果を示しつつ売却すれば6億円(=1億円×6倍)、つまり売却額は3億円増、2倍の価格で売却できるということになります。たった数カ月の改善の努力とその成果を財務諸表に反映する時間というリスク負担が3億円の増収として実現されるということです。M&Aを「戦略的」に捉えているオーナー社長様はおそらく改善実行してからM&A検討に入りたいと思うはずです。これをやらない手はないと思うのですが、M&A戦略策定という大事なプロセスを飛ばして、いきなりM&A交渉プロセスに入ってしまった多くのオーナー社長様は、このような構造を知らなかったのでしょう。非常にもったいないと思います。※単純化のため、倍率を高めるためのM&A戦略等はここでは無視し、6倍固定で比較しています。

実は、こういうケースは驚くほど多いです。上記の事例では2倍程度でしたが、条件が重なり合うと、想定外の売却収入を得ることも夢ではなく、弊社が支援したケースでも当初想定(複数社の大手M&A仲介が提示した想定売却額の最大値)の10倍以上で売却できたケースもあります。

 

さらに見逃せないポイントがあります。

サイズ(企業規模)が小さめですとバイサイド候補が絞られてしまうのですが、億単位の実力調整EBITDA、今後の成長見込みもあって数年以内に3億円とか5億円のEBITDAに伸びる可能性があるターゲット企業の場合には、サイズ面の制約が外れ、バイサイド候補やM&A技術面で格段に広がりを見せることがあります。

こうなってくると、セルサイドはM&A交渉上の不利な場所から有利な場所に移動できることになります。プロ・アマ混在市場から、プロ市場にワープできるのです。そして、プロの方がM&A能力が高く、高めの買収額を提示することができますから、より有利になりやすいのです。

買ってください」とお願いする買い手市場から「売ってあげてもいいですよ」と言える売り手市場に、市場替えできる可能性があるわけですね。需要が増えるので、価格は上がる。M&A市場の特性として、需要が制限される原因の1つにサイズ(企業規模)があるということですよ。

あくまでも総合的な状況次第であり、個別事情に応じて大きな差が生じる性質の話なので恐縮なのですが、ほんの数カ月の努力の結果、5,000万円×6倍=3億円から、1億円×8倍=8億円に向上しても、なんらおかしな話ではないのです。あと数年テコ入れすれば1億円が3~5億円になりそうなら、時間軸やスキーム等を駆使し、8億円ではなく、15億円とか20億円を目指すというM&A技術の登場の余地が生じます。

特に、ユニークで面白いけど欠陥がある会社の場合にあてはまりやすい事象と考えています。個別の状況次第ですが、決して大げさな話ではありません。

数カ月の努力が+5億円の追加代金となって返ってくるとするならば、時給換算したら一体どうなるでしょうか?おそらく時給100万円以上ではないでしょうか?

M&A価格交渉上の「核(EBITDA)」と「バネ(倍率)」がそれぞれ小さなまま売却してしまうのは、とてももったいないですね。

 

さて、「事前準備かー。面倒くさいな。」と思われたオーナー社長様はおそらくノーマルです。ほとんどのオーナー社長様がそのように感じられるそうですので。

ちなみに、ほぼ全てのM&A助言会社は売却前の準備の手伝いはしません(巨大企業の売却のケースは除く)ので、弊社以外のM&A助言会社に依頼する場合は、まず間違いなくいきなり売却活動に突入しますから、面倒な事前準備の努力は不要です。

しかし、ご縁があり、弊社が会社売却をサポートさせていただくとなった場合は多少の苦労が伴います。しかし、心配しないでください。

・売却前の準備をフルサポートすべき、かつ、ご納得いただいた場合には、集中して事前の改善活動をしっかり(プランAと、
・まずはバイサイドへのM&A提案を進めながら、つまり、提案・交渉と並行して改善サポートというプラン(プランBをご希望ならそのように、
・改善サポートは不要なので早く確実にできるだけ高く(プランCということならそのようにと、ニーズに合わせて柔軟にM&A戦略を設計するのが弊社のユニークな特徴です。

上記の実際に10倍以上の価格で売却できた事案でも、プランBでした。

ぜひ、可能性を限界まで追求し、後で後悔のない、納得のいく会社売却をしてください。

M&A助言会社のサポート内容が、ターゲット企業の潜在可能性(ポテンシャル)とフィットしている場合に、株式価値評価がグっと上がる可能性のお話をさせていただきました。

 

 

☆ お問合せ(お問合せフォーム/お電話/メールご都合のよろしい方法で) ☆

ごニーズに真摯に向き合います。

問合せ・割引・紹介

 

☆ 人気記事ランキング ☆

    • M&Aバリュエーションの最高峰 | DCF法の基礎と限界
      まず、現実の値決め(腹から欲しい度)と理論的なM&Aバリュエーション(完璧なDCF法含む)は同じものではありません。 どんなに精緻なM&Aバリュエーションをバイサイド(買い手)に提示しても、実際の値決め(売却価格)が...

    • 知っておくべきM&Aプロセス(株式譲渡のケース)
      M&Aで一番多く利用されるスキームが「株式譲渡」です。これからM&A会社売却をしようとするセルサイドオーナー(売り手)は、株式譲渡の手続き(プロセス)の基本形だけでも頭に入れておきましょう。 M&Aプロセスの...

    • M&Aで最高値で売る義務「レブロン基準」とは?
      今回は、M&Aで会社経営権を第三者に譲渡する場合に「堂々と最高値での会社売却を目指してよい理由」をご説明します。 また、この当然の権利が失われやすい背景をご説明しつつ、とはいえ、現実問題として、相手が納得しないとお金は出てこ...

    • 銀行に評価される会社が高く売れるというのは本当か?
      M&Aという取引は、「ターゲット企業(売り手企業)の経営権を売買する取引」です。 経営権を具体化するのは株式ですから「株式(エクイティ)市場」に属するものであることが大前提です。 銀行ローンが属する「信用(クレジット)...

    • M&Aにおける双方代理リスク
      双方代理リスクとは? 双方代理は原則禁止 双方代理は民法108条で原則として禁じられており、例外的に両当事者(本人)が事前に了解している場合にのみ許容されます。M&Aで会社売却を検討するセルサイドオーナー(売り手)は、...

    • 会社の売却理由として「良い理由」と「悪い理由」
      今回は、M&Aの目的を「好条件での売却」に設定する場合の売却理由として、どんな理由が「良い理由」、どんな理由が「悪い理由」に聞こえやすいか、そして、売却理由の聞こえ方次第で「創業者利潤にどんな影響」が生じるのか、を説明させていただ...

    • M&A会社売却の破談リスク:COC条項とは?
      チェンジオブコントロール条項(COC条項:Change of Control条項)とは、M&A会社売却を実行することで、経営権(支配権:Control)が、今までのオーナー(売り手:セルサイド)から、第三者(買い手:バイサイド)に...

    • 投資銀行の肩書って意味不明ですよね
      投資銀行では、若い青年なのに副社長(ヴァイス・プレジデント)などという肩書を持つ人がたくさんいます。副社長よりもディレクターの方が偉いというのも日本人としては不思議な感覚です。 今回は投資銀行のタイトルの上下関係と個々タイトルに求めら...

    • 問題になりやすい「のれん」。実は全企業の味方。
      暖簾(のれん)とは、企業が苦労して築いた競争優位の証です。 「企業価値を最大化しよう。」「上場株式の株価を上げよう。」「お客さん満足度(CS)を向上しよう。」「従業員の満足度(ES)を上げよう。」 これらは通常「良いこと」とされます。 ...