2018
09.14

売り手にとって最適なM&A助言会社を合理的に選ぶ方法(4/4)

M&Aのお金(価格・税金), M&Aのチーム管理

(参考)広義のM&A業者の分類

以下は、さらに深く各M&A業者タイプの成り立ちなども知りたい方向けのウンチク情報です。

実際にM&A交渉を進めていくと登場してくる各種のM&A業者を、いくつかのグループに分けてみましょう。
まず、大きく「M&A取引を実現」させる会社(前者)、その「M&A取引周辺サポート」する会社(後者)に分けることができます。

 

M&A助言会社

前者M&A助言会社と呼ばれ、FA(片手業者)またはM&A仲介(両手業者)に分かれます。

さらに、FAは、セルサイドFAバイサイドFAに分かれます。

M&A仲介も、件数主義安値誘導型両手M&A仲介会社、ネットワークビジネス型M&A仲介会社(M&Aブローカー)、伝統的両手M&A仲介会社に分類できます。

 

片手FAタイプ
セルサイドFA

FA業務のうち、セルサイドFAに力を入れる投資銀行内では、M&A助言チームは広義のコーポレート・ファイナンス(Corporate Finance)部門に属します。「企業金融に関する助言をする組織」ということで、Corporate Finance Adviser(企業金融助言者)ということです。会社の既存株式をまとめて売る(会社売却/部分売却)とか新規発行株式を売る(第三者割当増資による資金調達)取引が、投資銀行内のM&A部隊が担う主な仕事ということです。株を売ったお金がオーナーに行くのか、会社に行くのかという違いはあれど、第三者である外部企業や投資ファンドからお金を調達する支援という本質は同じことです。つまりは、株のセールスですので、株(ターゲット企業)の魅力を投資家(バイサイド)に伝えることが仕事の肝ということになりますね。投資銀行の他、証券会社も相性が良いと言えます。どちらかというと、楽観的、狩猟民族的、お調子者が多くなりがちです。

メリットは他のタイプと比較すると、圧倒的に品質(クオリティ)が高く、結果(売却額)を期待しやすい点です。膨大な業務量なので、受託する方も真剣で、受託してくれるなら成功可能性が高いと見ても良いでしょう。

デメリットは着手金を要求されることが多い点でしょう。品質を維持する必要コストの面もありますが、セルサイドの覚悟を問う保証金のような意味合いもあります。「受託者が、委託者に有益な結果を出すために、膨大な努力を投入する以上、委託者も一定の負担をしてください」というものです。合理的な範囲であれば払うべきでしょう。成功報酬から着手金控除してくれる先も多いです。弊社も着手金は必ずいただくことにしていますが、成果追求のための調査費等の方が高くなり、人件費・賃料なんて一切カバーできず、赤字になるケースもしばしばというのが実態です。ちゃんと仕事をする片手FAに支払う着手金は費用ではなく投資と考えていただけると幸いです。

弊社SCAも得意分野に特化したM&Aブティックハウスとして、ココに位置付けられます。元投資銀行M&Aマンで独立した人が経営するM&Aブティック会社の場合、中小規模の案件でも全力で担当してくれたりしますから、まずは打診して提案を受けてみるべきでしょう。それぞれ得意分野があると思うので、ピッタリとはまるところが見つかったら、一番コスパが良くなるのがこのタイプかと思います。ちなみに、FAは、案件毎にセルサイドFAかバイサイドFAになるのが普通です。弊社は、セルサイドFAしか受託しない、両手契約も絶対にしないという業界初セルサイド特化型FAです。得意技は、実業経営経験者が売却前後の改善策を提供し(可能なものは売却前に実現させ)、結果として最高の売却条件を実現するという点です。この取り組みも珍しい取り組みかと思います。これからは、特色のあるM&Aブティックハウスが増えていき、M&Aを通じた「良い会社をもっと良い会社にするお手伝い」が主流になっていくことを期待しています。

弊社代表の略歴ご紹介

http://sherpa-capital-advisory-rep.blogspot.com/2018/09/sca.html

 

 

バイサイドFA

また、バイサイドFAの役割はセルサイドFAとは大きく変わります。セルサイドFAの業務目的は「セルサイドの利益を最大化するため、優れた経営戦略を実践できそうなバイサイド候補を探索し、M&A取引を実現させること」ですが、バイサイドFAの業務目的は「セルサイドFAから提案を受けたバイサイドからの依頼を受け、成約は目指しつつもターゲット企業のマイナスポイントを探し、条件交渉すること」です。バイサイドFAは、制度的な専門知識が特に重要になりますので、会計系コンサルティング会社とか大手金融機関(都市銀行等)が担うケースが多いかと思います。どちらかというと、悲観的、農耕民族的、しっかり者が多くなりがちです。

弊社の代表も公認会計士ですが、M&A公認会計士には2種類存在すると考えてください。財務や税務等の基本は押さえていますから、FA業務の一部について、一定の知識を持っています。ただし、決定的にチャンスへの姿勢が異なります。圧倒的多数が、大学の卒業前後に公認会計士資格を取得し、監査法人に入所して監査証明業務を担い、その後、会計系コンサルティング会社等でDD等のチェック業務に従事、延長線としてM&A成約を目指すM&A助言業務に従事するというパターンです。少数派が、資格独占業務から早めに切り上げ、投資銀行等で本格的なM&Aバンカーとして修業を積み、ディールメイカーとしてM&A助言に従事しているケースです。前者は、職業柄、監査やDDといった「マイナスポイントを洗い出す仕事時代のクセ」が染みついているので、バイサイドにとっては重宝します。一方で、時に力技も駆使しながら創造的に課題発見・解決しなければいけないセルサイドのM&Aバンカーとしては頼りないかもしれません。

 

両手M&A仲介タイプ
件数主義安値誘導型両手M&A仲介会社

件数主義安値誘導型両手M&A仲介の特徴は、単純計算式での売買仲介M&A未経験の営業マンを積極採用社長が片手FA未経験、あたりが分かりやすい特徴でしょう。良い会社だけど規模が小さすぎて片手FAが相手してれくれず、同業への売却でも良いし、純資産に少し上乗せの価格で売っても良いというセルサイドや、バイサイドを見つけるためには足で探すしかないというセールスポイントが少ない会社を売る場合以外では、実はあまりメリットがありません。人によっては1社が売り買い両当事者の間で動くので、相手をするのが1社だけでよいという気楽さや、片手FA比でバイサイド提案前の準備が少ないので楽であるという点もメリットかもしれませんね。デメリットは、結局コスパは悪くなりやすく、着手金無料の場合は特に情報漏洩リスクが高まる乱暴な売り方をされても文句を言いにくいなどです。両手仲介は自動的に双方代理リスクエージェンシー・スラック問題が含まれます。「ただより高いものはない。」「覆水盆に返らず」がピッタリ当てはまるのがこのタイプのM&A助言会社です。件数主義≒強烈ノルマ管理ですから、ストレス耐性が強く、押しは強いけど、年配に好かれやすい好青年営業マンタイプが多くなりがちです。

 

ネットワークビジネス型M&A仲介会社

ネットワークビジネス型M&A仲介会社は、別名、M&Aブローカー、一部の投資ファンドの方に言わせると「M&Aおじさん」と呼ばれ、M&A仲介業者等をはじめとする多様な業者間の情報交換によって、なんらかの取り分を受け取る業者です。おそらく「M&Aをやってます」と称する業者の半分以上がこのタイプに属しているかと思います。メリットは限定的でしょうが、例えば、意中のバイサイドがオーナー経営の場合、かつ、そのバイサイド・オーナー社長が「良いものにはしっかり払う」場合には、個人的な人間関係こそがM&A成功にとって重要となりますから、それを持っているM&Aブローカーに頼むというのがコスパが良くなる可能性があるでしょう。個人の能力の見極めが重要です。M&Aブローカーの一角と占める元外資系投資銀行マン(M&A以外)、元大企業の重役などが、M&A助言で必要なスキルセットを備えているケースはむしろ稀です。弁護士や会計士が、後述サポート業務から発展してM&A助言本体を担うケースも同様です。デメリットは、とにかく業者が今知っている所に買ってもらおうして選択肢が狭くなりがち、目先の収入重視で結果を徹底追及するサポートが少ない点でしょう。なんらかの理由で一匹オオカミしている専門家とか元一流企業の偉い人等、様々なタイプが存在します。M&Aオジサンは「こんなに良い会社をEBITDA2倍で売ってくれる段取りをしてくれるなんて」と一部バイサイドにとって非常にありがたい存在になっているようです。

 

伝統的両手M&A仲介会社

日本でM&Aという言葉が使われはじめたのは、米国でLBOが隆盛した1970年代の少し後、1980年代の事だろうと思います。その頃から最近まで、日本では、対等合併という形が好まれました。実質的にターゲット企業(売り手企業)の経営者が、実質的にバイサイド(買い手企業)に飲み込まれるというイメージを嫌ったのでしょう。このニーズに対応すべく、日本独自の両手M&A仲介というスタイルが開発されたと言えるでしょう。対等合併では、バイサイドとセルサイド・ターゲット企業の間にたって、双方の主張や要望等を細かく聞いてあげて、一種の「不満の吐け口」「中間管理職」的な立場の人が不可欠となります。こういうM&A仲介の中には、前職が証券会社の法人営業だったり経営コンサルティング会社の人が大勢いたりしますので、担当者次第では専門的で効果的なM&A助言を実施することができる可能性があります。新興の件数主義安値誘導型とは一線を画す1件1件を大事に扱うタイプです。但し、両手である以上、構造的に双方代理リスクエージェンシー・スラック問題が内在してますから、少なくとも、担当者(個人)の信頼性や知識・スキル等を評価してから依頼するほうが無難でしょう。どちらかというと、昔ながらの証券会社の法人営業マン、人情に厚い人が多いと思います。

 

M&A取引周辺サポート業者

後者、つまりM&A助言会社以外のM&A業者としては、DDベンダー(会計事務所、弁護士事務所や経営コンサルティング会社等)や株式価値算定(バリュエーション)業者(会計事務所等)がいます。また、M&Aの実行前後で経営改善のプランを立てるのを補助する経営コンサルティング会社や不動産価値を算定する不動産鑑定業者土壌調査顧客調査をする会社もDDベンダーに加わるケースがあります。

セルサイドにとって大事なのは、前者のM&A取引を実現させる会社ですから、前者(FAもしくはM&A仲介)について基礎知識を持ってから契約を結ぶことが重要です。後者は主にバイサイドのために働くM&A業者ですので、M&A助言会社から情報収集して、交渉上の留意点を把握しておけば足ります。バイサイドDDベンダーの実務経験を持つ人がセルサイドチームにいると、交渉相手の動きを予想しやすくなりますから、非常に重宝します。

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