2018
12.06

人手不足とM&A:特に内需系企業は親族内事業承継ではなくM&A会社売却が賢明な理由

M&Aで会社売却をする心構え

深刻な人手不足問題は、M&A会社売却においても重要ポイントの1つとなっています。

生産年齢人口の減少と非生産年齢人口の増加によって引き起こされているのが、今の日本の人手不足問題です。戦後の人口ボーナス期が極端であった反動として、人口オーナス期のマイナスインパクトも大きくなるという必然でもあります。

人口増による人手不足解消は、社会保障費問題が根本解決し、今の現役世代が安心して結婚・子育てに踏み切れる状況にならない限り、難しいでしょう。つまり、人口増による問題解決は、ほぼ実現不可能と思われます。

では、どうするかですが、①AIやロボットによる生産性向上で解消する、②外国人単純労働者の受け入れ増加で解消するという、解決策が流行っています。

しかし、これらは、近視眼的かつ片手落ちの議論です。なぜかと言うと、これらの解消策は、サプライサイド(供給面)からしか考えていません。デマンドサイド(需要面)も考えなければ、短期的に解決したように見えても、すぐに元の木阿弥か別の問題を引き起こすのです。

特に困るのは、内需系のビジネスです。

 

人手不足問題と内需系ビジネス

外需系(輸出可能、海外販売や海外進出が容易な事業)も、たしかに困るでしょうが、製造拠点を海外に移転したり、海外需要の取り込みに成功すれば、国内での人手不足や内需減少による売上減少を補うことが可能です。

一方で、内需系ビジネスの場合、仮に、ロボットが製造・サービスを人間の代わりにやってくれるとしても、人口が今の3割も減った後、同じ企業数のまま、同じ量の商品・サービスを供給したらどうなるか?当然、需要を奪い合いの末、共倒れ、もしくは、早めに買収攻勢に出て勝ち残った人が市場を寡占という形になるのが見えています。

食べ物(食品(製造、卸、小売)、外食、中食)は、基本的に、日本国内にお客様がいてはじめて成り立ちます。鮮度や安全の問題があります。

衣類(繊維、衣服製造、卸、小売)も、日本人向けに作る商品は、難しくなるでしょう。

住まい(不動産、建設、建設機器等)も典型的な内需ビジネスです。日本に住む人が減るとどうしようもありません。

サービスも同じですね。サービス提供者が日本人で、お客様も日本人です。

もちろん、技術的解決による例外はあるでしょうが、内需系ビジネスは、今後ますます苦戦を強いられるはずです。

外需系(自動車、精密機器、機械等)は、技術力や販売力が維持でき、外需のニーズに応じ続けられるのであれば、日本の人口減問題は回避しやすく、「供給力をどうやってカバーすればよいか」に焦点を当てれば済みます。つまり、前述の2つの人手不足解消策は、主に、日経平均採用銘柄のような大手の輸出関連企業に関する解消策に過ぎず、多くの内需系ビジネスにとっては、解決策としては片手落ちなわけです。

AIやロボットは食べ物やサービスを買ってくれませんし、海外からの単純労働者も日本での消費を切り詰め、母国の家族に仕送りするため、国内需要への貢献は微々たるものになります。労働力は増えても、国内での消費力が増えないと、外需系ビジネスにしか恩恵が回らず、内需系ビジネスは売上が減り、AIやロボットを導入する余力すらなくなる、「いつになったら一息付ける日が来るのか」を待ち続ける、という悲惨な事態も容易に想像できます。

 

人手不足と事業承継

もし、内需系ビジネスを展開している会社のオーナー社長が、自分の引退後の心配をする場合、「できれば、家族主義自前主義で永久に存続させたい」という考えが、そもそも甘いのかもしれません。

「M&Aで次々と同業・異業種企業を買収して新結合の効果で需要を創造し、規模の優位性を利用して新テクノロジーを他より先に上手に活用し、同業他社を疲弊させ市場シェアを更に奪い、5年や10年で全く別次元の企業グループを形成しよう」といった覚悟や才覚を持ち合わせている後継経営者がいるなら別です。

しかし、そうでない場合、長期に亘る先の見えない不安、何かが起きたら資金繰りに頭を悩ませ、運が悪いと試練ばかりの茨の道を選んでいるのと同じことです。

事業は、技術革新や競争範囲の拡縮によって、将来の予想可能性が大きく変化します。今からの時代は、「やり方次第で、上にも下にも大きく動く、ハイリスク・ハイリターンの時代」と考えておいて間違いはないでしょう。新技術を活用しデータを持つ者が、データを持たない者の顧客を奪って成長するというGAFA時代は、当分続くでしょう。「データとかITとかAIとかは、うちの商売には関係ない」というのも、そもそも認識が甘すぎると思います。すでに、多くのアナログな業界が、新技術活用系に需要を奪われています。急成長企業の裏には、ほぼ必ずこの図式が埋め込まれていますから、研究してみてください。とっくの昔に基礎需要は飽和しているわけですから。つまり、技術とマーケティングの巧拙の時代(巧者だけが成長し、拙者は廃れる)とも言えるでしょう。

現実的に考えると、多くのケースで、もっとも攻守バランスの取れる選択肢が、M&Aによる会社売却ということだと思います。会社の潜在能力の最大限の発揮のためにも、単独経営を続けるよりも外部の経営資源との融合の効果を上手に活用すべきです。

会社売却というものは、イメージの悪い身売り、敗北の会社売却、逃亡の会社売却、後始末の会社売却だけではありません。

創意工夫で様々な解決策を実現可能な、柔軟性ある経営ツールがM&Aです。

新結合、攻めの会社売却、成長の会社売却、自己実現の会社売却というものも現実に存在し、柔軟に合理的に思考するタイプのオーナー社長で、利用する方が増えてきています。

成長資金調達(第三者割当増資)も、会社の株式を売却するわけですから、一種の会社売却です。

異業種や異文化との新鮮な結合効果が見込めるのがM&Aの特徴の1つであり、同業への単純な100%売却「以外」の方法も組み入れながら、企業価値最大化の方法を具体的に模索することで、関係者全員がWin-Winとなることが可能になります。

 

M&Aによって、複数の企業を結合することで、次のような問題が解消でき、結果として、新しいタイプの需要増という内需系ビジネスの根本問題解決にもつながります。

・企業数分だけ存在する間接部門従事者を減らし、より生産性の高い仕事に就く人の割合が増える

・少なくなる需要を分ける分母が減るので収入が増え、消費能力が増える

・経営結合の過程で、才覚のある人材が、起業するアイデアやスキルが身に付く

・過当競争による疲弊や弊害の影響が薄れる

・特に異業種間の新結合による革新(イノベーション)が競争力の源泉になり新しい需要が創造される

 

ここまでは、人手不足問題による需要減少という内需系ビジネスの危機に対し、事業承継や企業の潜在能力発揮の方法として、M&A会社売却が攻守バランスの取れた方法であることの説明でした。

この後、実際にM&A会社売却の交渉をする最中、およびM&A会社売却をした後に発生する人手不足問題の影響です。

 

M&A交渉中に出現する人手不足問題

M&Aの交渉中及びM&A後の統合過程においても、人手不足問題は非常に重要なテーマになりえます。

つまり、M&Aバリュエーション(企業価値や株式価値の評価)は、「将来キャッシュフローの期待値」に左右されるのですが、現状維持や成長といった経営目標を踏まえた将来予測の中で、人材の採用・教育や人件費水準の問題が必ず出てくるからです。

M&A交渉にあたって、バイサイド(買い手)候補に開示する資料の内容、バイサイド候補から提示されるQ&Aやマネジメントインタビューへの受け答えなど、適切なバランスを考慮しないと、損をするのはセルサイド(売り手)ということになります。

できるだけ事業・ファイナンス・M&Aに関する知見を兼ね備えたM&Aバンカーと早めに相談して、どのような事業計画等の詳細な開示資料をM&A会社売却中にバイサイド候補に提示するか、慎重に検討してください。

特に、経営者が一定期間の引継ぎ後に引退されたいものの、社内に後継社長候補がいないケースでは、外部から経営者を招聘することになりますが、人手不足問題は、高度経営人材でも同様に(むしろ特に)厳しさを増しています。

M&A会社売却の成否や条件交渉に重大な影響を及ぼす領域の1つが、人材・組織・風土に関する領域です。

必要に応じ、十分な準備期間を設け、M&A会社売却が成功するような適切な準備をしてください。

弊社SCAが過去に手掛けた事業承継目的のM&Aでは、十分な事前の検討をして、最適なバイサイドにご紹介した結果、弊社への相談当初「とにかくすぐに引退したい」とおっしゃっていたオーナー社長様が「今まで1人で全てを背負って、経験による直感で全てを決めてきたが、新しい着眼点や合理的な経営手法を間近に見て、具体的な会社の成長可能性を数字で理解し、もう少し経営に携わりたい」と意識が変化した方も一部におられます。

また、「どうしても引退しなくてはいけない理由」があるオーナー社長様の場合にも、無理なく経営を承継しやすくするための地ならし活動を社内で行っておくだけでも、バイサイドからの印象が大幅に異なってきます。

適切な準備をするだけで、足元を見られるような売り方をしなくて済むということです。

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