2019
01.24

地方の会社を有利な条件で売却する方法【2】

M&Aのお金(価格・税金), M&Aのチーム管理

ご好評をいただいております『「地方の会社」をM&Aで有利に売却する方法』の続編です。

弊社SCAは地方のユニーク企業の売却についてのご相談を受けることが多い面もあり、地方の会社でユニークな強みを持つ会社は、好条件で売却できる余地が高いケースがある点、確信をしています。

この点を少し深堀りしてみたいと思います。

 

地方企業を売却する際のプラス可能性1

まず大事なことは、地方の会社で、なんらかのユニークな強みを持つ会社は、特に好条件で売却できる余地が高いケースがあるということです。

なぜなら、バイサイド(買い手)の立場から見てみると、「今の事業基盤(地方)でのみ展開しているユニークなビジネスモデル」を東京・大阪・名古屋等の大都市圏で展開すれば、大都市圏では競争上の差別化戦略がゼロから始めるよりも、遥かに低いリスクで始められるからです。

時間を買う」と言いますが、このケースでは、バイサイド(買い手)の事業基盤上で「差別化を図って失敗・学習・改善し、勝てる事業に育てる時間を買う」ということですね。

もし、海外展開も考えられるタイプのビジネスモデルであれば、クールジャパンの差別化要素とか日本製(Made in Japan)の信頼性が相まって、M&Aを使うことで海外展開での早期成功を実現できる可能性が高まります。会社を売却するといっても、所有経営は元々分離可能なものですから、所有はしないけど、経営は続けるという形も、バイサイドのタイプの選び方次第では可能になります。売却後、社長を辞めたい、残るけど負担を減らしたい、今まで通りに頑張りたい、今まで以上に頑張るための武器を手に入れたい、など、選び方と提案方法次第でいくらでも可能性を検討できるのがM&Aの最大の特徴であり、M&Aバンカーの腕の見せ所でもあります。

また、仮に事業会社で適当な相手が見つからないとしても(ユニークは常に諸刃の剣)、ユニークな企業の場合、投資ファンドと一緒に会社を育てなおすとか、会社の成長を全部又は一部任せて二段階売却などというストーリーも、(M&Aアドバイザーの腕次第ですが)可能性がグっと広がります。

企業の価値を高めること(企業価値の向上)ができれば、結果として、健全な関係者全員にとってのメリットとなるわけです。大事なのは、懐疑心で固まっているバイサイドに、可能性を具体的に理解してもらい、リスクとリターンを合理的に配分するというプロセス(M&A提案とM&A交渉の品質)ということです。

 

地方企業を売却する際のプラス可能性2

もう1つ大事なことがあります。

近場にいる同郷バイサイド候補に限定して売却することは、条件面等で不利になりやすいので、できるだけターゲット企業(売り手企業)の潜在能力を発揮させてくれるようなM&A能力の高いバイサイド候補に打診すべきで、そのような会社はどうしても大都市に存在するという話をしました。

つまり、地理的に遠いわけです。

地理的制約がまったくない事業はありません。特に店舗を構えている事業等は、バイサイドとしても不安を感じる面があるのは仕方のない話です。不安=リスクリスクが高い=割引率が高い=倍率が低い、つまり会社の価値の評価額が低くなるということを意味しますから、できるだけ不安要素を取り除く、軽減する努力や仕組みが必要です。

また、純資産ベース等の安い条件で売却しても良いなら、同業買収後のコスト削減で結果を出せますから簡単です。

しかし、潜在可能性を考慮した将来キャッシュフローベースでの好条件を狙うなら、M&A能力の高いバイサイド候補に打診するしか道はありません。M&A能力が平均以下のバイサイドの責任者の多くはサラリーマンであり、買収失敗の責任回避の方が、買収成功の成果狙いよりも圧倒的に大事だから仕方のない話です(稀に、買収担当者が次期社長レースの有力候補で買収成功で実績作りをしたいというニーズがある場合等の例外を除けば)。M&A能力の高いバイサイドの場合、自分だけでは埋められない地理的限界を、ターゲット企業の近くの協力者を巻き込むことで解決しようとするケースがあります。

特に、地方であれば、取引先の地方金融機関(銀行等)との関係を良好に保っておくと、さまざまな面でプラスになる可能性がありますから、地方の会社を売ると決めたので、「もう関係ない」ではなく「だからこそ取引銀行等との関係を改善しよう」という発想が大事になります。特に、LBOローン等の好条件を狙うためにファイナンス面のストラクチャーを使う場合にも影響が生じる可能性があります。

 

プラス可能性を実現するために1

しかし、「言うは易し、行うは難し」。

数百社のバイサイド候補中からの最も企業価値最大化に貢献してくれそう、M&A会社買収を実行してくれそうな数社の精鋭候補数社に絞ってみても、現実的にそのバイサイド候補が魅力を感じなければ意味がありません

①もっとも魅力的に映る状態に近づけておく(売る前できること)、②近づける方法(売った後すべきこと)を練りこんでおくことは最低限の努力です。

さらに、バイサイド候補の買収後の成長・改善戦略を想定し、どのような情報開示をすることで、魅力が増すか、リスクが小さく抑えられるかを考えて、事前にできることは全て実行しておくことが非常に重要です。

当然、開示情報準備作業は多岐に亘ります。「内部の財務データや企業概要をパワーポイント数十ページにまとめて、後はよろしく(合計50時間程度の準備作業で終了※日本の中小企業M&A助言会社の平均準備時価はさらに短いという統計もありますが。)」という方法では完全に不足してしまい、個性を発揮できないM&A、売却額がもったいないM&Aに落ち着いてしまう可能性があるわけです。

現場の顧客の声から製造・開発の制約等、あらゆる観点から、M&A案件としてバイサイド目線でのメリットを引き出し、デメリットを引き下げるかを考えるのが、M&A会社売却の準備期間にすべきことと要約できるでしょう。

 

プラス可能性を実現するために2

このサポートをするのが、売り手のためだけに努力する片手FAの仕事の醍醐味であり、存在意義であるはずです。

そのため、特にセルサイドFA(ファイナンシャル・アドバイザー=M&A助言業者)は、ターゲット企業(売り手企業)の臨時経営アドバイザー臨時財務アドバイザーであり、かつ、セルサイド(売り手)にとってのキャピタル(株式・税金)・アドバイザーとして動けることが理想です。

 

ちなみに、バイサイドFAは、バイサイドの買収担当部署の臨時派遣社員のような立場です。

バイサイドFAは、バイサイド経営企画部の臨時派遣社員のような仕事内容なので相対的に簡単(短期・大量・複雑な場合はありますが)です。公認会計士やMBAレベルの経営・会計・税務・法務といった基礎知識やM&Aアドバイザー、DDベンダー、M&Aバリュエーターとしての実務経験があれば足ります。通常、一定の学問を修めた後で、3~5年の修行を積めば一人前になることができます。そのため、M&A能力の高い、セルサイドからみて魅力的なバイサイドは、バイサイドFAを依頼しないケースも多いのです。(両手仲介は例外的に、バイサイドにとって魅力的な案件を持ってきてくれる業者なので、相応の報酬を払う、その負担はセルサイドが負うという構造です。安い条件で売却されてしまったのに、実質的に負担する報酬が2倍、もしくはそれ以上のケースも多いと言えるでしょう。高額な広告活動等の裏側、お金の動きを想像してみてください。)

しかし、セルサイドFA(=片手のM&A助言会社)を選ぶ場合には、上記のバイサイドFAとしての条件に加え、事業ファイナンスM&Aの知識・経験・フィット感がより重要です。

単にM&A業界に数年いるだけで事業経験がない、ファイナンス経験がない人が担当者だと、創業経営者等への適切なアドバイスは到底できないし、肝心かなめのバイサイドとの直接交渉の段階になってから、「事業のことは全てバイサイドのご判断にお任せします」「ファイナンスのことはバイサイドが連れてきた銀行さんにお任せします」「私はバイサイドを連れてきたあとは、伝言を伝えることが主な仕事です」では、セルサイドが困るはずです。しかし、この段階に進んでから気づいても遅いのです。

「こういうケースではどういうことが起きそうですか?」などと具体的に懸念される事象を絡めたイキナリ突然の質問をしておきましょう。委託する前に担当者の力量を推し量っておけば、多くの問題を事前に回避できるはずです

 

つまり、最大の問題となるのは、M&A会社売却の目標設定と、その実現をサポートするM&Aアドバイザー(担当者個人)の選び方指示の出し方・相談内容です。

M&Aアドバイザーには、色々な種類の業者が混在していて、一言でM&Aアドバイザーと言っても、ピンからキリまで色々です。

 

例えると、

老人の自宅に眠る貴金属を買い付ける中古品買取販売業者のような業者(テレアポ⇒訪問買取)もいれば(ただし、買取は自分ではしないので在庫リスクは負わない)、

貴金属の品質を見極め、最高の値打ちとして評価されるためには誰に使ってもらうべきか、その人に好まれるにはどのようなデザインのジュエリーに仕立てることが必要かを検討して、その作業を実行して、最高の価値を引き出す業者(ジュエリーデザイナー+ジュエリープロモーター)もいます。

当然、両者の仕事の質はまったく違いますし、結果としての売却条件も雲泥の差となる可能性があります。

前者は、『「確実に買ってくれるであろう中古品販売価格」マイナス「自分の儲け」イコール「買取価格」に誘導する仕入トーク』を一番練習するはずです。

後者は、『なぜ、買い手候補の〇〇が、〇〇を〇〇に改善しておき、〇〇を買い手候補の〇〇戦略にぶつければ最も高い評価になるのかという理由(事実と論理)』で説明するはずです。

前者に価格等について質問をすると、「業界では常識です」「皆さんこの条件で売られてますよ」「弊社は大きな信用ある会社です」といった本質的な回答から逃げた回答になりがちでしょう。

後者は、売り手の個別事情や、現在の市場環境等を、検証可能な事実論理に基づいて、なぜなら「バリュエーション理論的に〇〇」「現在のM&A市場では〇〇」「金融市場では〇〇」「投資ファンド市場では〇〇」なので、「〇〇については〇〇にすべき」「〇〇のような可能性や選択肢がある」「〇〇と△△を天秤にかけるとこういうリスクとリターンが見込める」と非常に具体的かつ明快に説明する回答になるはずです。

もし、知人の老人がこのような中古買取業者に相場以下の価格で思い出の詰まる貴金属を売ってしまったら、その方へこのようにアドバイスするのではないでしょうか?

ちゃんと調べましょう。

最近は、ネット人材業界のような動きも顕著ですので、多数の中古品買取業者間のマッチングサイトのようなものも出てきています。「平凡な企業を平凡な条件で売却できればよい」というニーズなら、全然OKなのでしょう(情報漏洩リスクも小さいし、目的は達成できている)が、「ユニークな会社をさらに飛躍させるためにM&Aをする」のであれば、やはり、AIとか機械ではできない領域がほとんどです。マッチング確率を上げ、M&A業者の都合上はよいのですが、情報拡散には、情報漏洩リスクがセットでついてきますから、この点でもユニークで企業秘密のある差別化戦略系の企業を売却するには、昔ながらの「こっそりとプロが水面下で動く」が未来永劫正解です。

 

M&A会社売却も上記の貴金属と同じ、もしくは、それ以上ではないでしょうか。

もしかすると、セルサイド(売り手)からすると、血を分けた子供と同等の時間と熱意で育てたのが、ターゲット企業(売り手企業)のはずです。

質問攻めにして、一番納得感がある回答をしてくるのはどこの誰か、がとても大事だと思います。

 

ちなみに、弊社SCAは、独自のビジネスモデル(「ユニークな会社を高く売る」)を採用しており、ターゲットを絞り込むことで、規模の要件はほぼ取り払い、あくまでも「潜在可能性」で案件受託可否を決定することにしております。

着手金は、案件受託後ですので、当面の潜在可能性の分析とフィードバックまでは完全に無料ですし、その前に着手金の目安は早めにお伝えさせていただいております。

規模に関わらず、案件を受託した以上、投資銀行比で『助言範囲は倍以上、助言品質は同等以上、着手金は1/3以下の水準』を基本に目指しています。

まずはお気軽にお問合せください。

 

 

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