2019
11.13

M&A市場内のブルーオーシャンとレッドオーシャン

M&Aのお金(価格・税金), M&Aのマーケティング

M&A市場は、「単一・均質な売買市場」でしょうか?

答えは否。

「個別の売却対象企業ごとに、M&Aアドバイザーが中心となって、案件ごとに創設する市場」が本来あるべきM&A市場です。売却案件の魅せ方、リスク調整、参加者や比較対象の管理がM&A市場の基本的役割です。

できるだけレッドオーシャンで売るべきではありません。少なくともユニークな強みを持つ会社を売る場合には避けるべきです。釣られたらラッキーの魚群の中に自ら混じる必要はないのです。

あなたの会社にフィットしたブルーオーシャンを探し、そこで売りましょう。優良なバイサイド企業が、優良なM&A案件を探していて、適正な条件で買ってくれます。

レッドオーシャンM&A市場は、単一・均質な売買市場で、たくさんの売却案件に埋もれながら「誰でもいいから買ってもらう」ためのM&A助言会社本位もしくはバイサイド本位の市場です。

ブルーオーシャンM&A市場は、希少なM&A案件として、オーダーメイドで市場を用意し、「売る相手と条件を選ぶ」ためのセルサイド本位の市場です。

競争の濃淡によって、ブルーとレッドを分けるわけですが、M&A市場における競争の濃淡は、次の2つのレベルで認識すべきでしょう。

1つめは、バイサイド(買い手)からの視点

2つめは、M&A助言会社からの視点

です。

「本来、高級料亭で一流職人に調理してもらい富裕層に提供されるはずの、水深50mのクエや深海魚アンコウが、鰯(いわし)やシラスが浅瀬に群がる海にいたため、いわしと勘違いされて回転寿司屋でロボットに調理され、一皿150円で提供される」という悲劇と例えるとイメージしてもらいやすいと思います。「実は脂の乗ったクエである」ことを証明しないといけなかったのですが、「勝手に理解してもらえる」という楽観や、「みんな売ってるので適正評価されるはず」という性善説によって、海中スコープも用意せずに写真一枚で売ってしまったことが悲劇の原因です。運よく150円のいわしと思ってクエにありついたお客さんはラッキーかもしれませんが、味が違うとクレームを出すかもしれません。クエほどの希少な魚でなくても、サンマやサバなら、なんらかの特徴があるなら、もったいない売り方をしないようにしましょう。

 

バイサイド(買い手)視点でのブルーオーシャン条件

バイサイドは、事業会社にせよ、投資ファンドにせよ、多数のM&A案件の持ち込みがあります。

昨今、事業承継難M&A案件が多発し、これに群がるM&A業者も多数出現、M&Aバイサイド候補は大きな広がりを見せ、各バイサイド候補に多数のM&A案件が持ち込まれるのが現状です。

その中で、M&Aで好条件で売却するには、まず第一に「欲しい」「他にはない」「この案件をぜひゲット」と思ってもらうのがスタートラインです。

多数のM&A案件に埋もれにくいように、「いかに目立つか」、これに成功できそうなバイサイド候補選びが非常に重要なのです。

成功すれば、ブルーオーシャン

失敗すれば、レッドオーシャン

 

M&A助言会社視点でのブルーオーシャン条件

M&A助言会社が多数存在しつつ、そのM&A助言会社も仕事の進め方は多様化してきています。

人間を介さずにネットマッチングで済ますタイプ、1人で常時5件も10件も扱うマッチング専業タイプ、1人が1件に集中し手厚く魅力を引き出し伝える投資銀行タイプまで、非常に様々です。

いずれにしても、案件として力を割く気にならないと、着手金だけ払わされて放置される、バイサイドから情報提供料を貰うための使い捨てツールとして扱われる、そもそも案件として扱ってもらえない、という事態もありえます。

案件受注のハードルの高さと、M&A助言会社の能力は相関しますから、成功確率や売却金額等にダイレクトに影響するわけです。

成功すれば、ブルーオーシャン

失敗すれば、レッドオーシャン

 

ブルーオーシャンで売るべき

競争をできるだけ避けて、適切な売り方で売る方が絶対に得策です。

ジャストフィットした有能なM&A助言会社に、あなたの会社専用のブルーオーシャンM&A市場を作ってもらいましょう。

ここで特に注意していただきたい点があります。危険な思想が「みんなと同じことをする」です。

会社を興された創業オーナー社長であれば知っているはずです。「旨味があるのは、人と違うことをするからである」と。

ブルーオーシャンは「人と違うことをする」という、ちょっとした努力や勇気の褒賞ということです。

みんなと同じことをする」のは、面倒臭いとか、自分だけ違うことをして失敗したくないとか、でしょうが、逆にこう聞きたいです。「なぜ創業したのですか?」と。

 

レッドオーシャンで売ってしまった典型的失敗例

  1. 面倒臭いので、M&A助言会社選びの面談時に、自社の潜在可能性をしっかりと整理して伝えなかった
  2. 受託してくれるM&A助言会社を見つけたが、実際に担当してくれる担当者は経験の浅い人をあてがわれた(レッドオーシャン)
  3. 自分でやるのは面倒くさいし、担当者も能力不足で、ありのままの開示情報しか準備しなかった
  4. 一度に複数の売却案件を扱う所謂リスト営業をされてしまった(売却案件リストの1行)(レッドオーシャン)
  5. 興味を示してくれた会社と1社限定の相対交渉でDDに進んだが、初期開示情報にないネガティブ情報を根拠に、途中で条件を大幅に引き下げられてしまった
  6. M&A助言会社から提示された予想売却可能額の半額以下での売却で妥協するしかない、それがイヤなら別のM&A助言会社に依頼して一からやり直しするしかなくなった
  7. 契約で2年間、このM&A助言会社が提案した先への売却をしたら成功報酬を支払う義務があるので、泣く泣く売却を決めてしまった
  8. しかしM&A助言会社との契約で最低成功報酬額があったので実質30%の成功報酬を負担することになった

こういうのが典型的な失敗例です。

この会社も、最初にしっかりと魅力を引き出し、リスクを遮断し、伝え方を吟味して、最適な相手に提案していれば、上記の数倍の条件で売却でき、税引き後の手取りは5倍、10倍になっていたかもしれません。

性善説、楽観主義という島国日本人の特徴・長く続いた人口ボーナス期の後遺症が、M&A会社売却という局面ではマイナスに作用してしまうパターンです。

ところで、M&A助言会社はまったく損をしてませんね。リストの1行として太客バイサイドとの関係強化に利用できましたし、両手タイプなら複数のバイサイド候補から情報提供料等を貰ってるはず、成功報酬もダブルです。下手をするとセルサイドオーナーが数十年かけて作り上げた会社を売却した手取り額より、M&A助言会社の方が多くのキャッシュを手に入れたかもしれません。合計100時間しか時間をかけていないのに、です。

 

成否を分かつのはM&A助言会社選び

レッドオーシャンを避け、ブルーオーシャンで売るためには、M&A助言会社選びの時点で勝敗が決まることが理解いただけたかと思います。

残念ながら投資銀行タイプのM&A助言会社が扱ってくれなければ(規模や事業内容等で受託されないケースも多いです)、徐々にハードルの低いM&A助言会社に妥協していくという選び方が、失敗を避けやすい選び方だと思います。

特にユニークな強みを持つ会社を売る場合、大量処理型のM&A助言会社、経験の浅いM&Aアドバイザーへの依頼は、非常に危険です。

ユニークはもろ刃の剣なので、有能なM&A助言会社ならブルーオーシャンを作りやすい側面がある一方、能力不足の担当者に任せるとドス黒いレッドオーシャンに突き落とされやすい側面もあるのです。

人と違うチャレンジ」の対価は大きいですから、「ブルーオーシャン」でご自身の人生の結晶を確かな形に変えてください。

 

 

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