2020
04.10

不景気・不況時、借入を増やすとM&A会社売却で不利に?

M&Aのお金(価格・税金)

今回は、いずれM&A会社売却を検討しようと思っていたが、今回の新型コロナ問題で資金繰りの見通しが厳しくなってしまい、実質無利子とか5年の返済猶予等といった優遇があるといっても、「将来の弁済を要する借入金を増やすべきか」、「M&Aでどんなマイナス影響があるのか」という悩みを抱えてしまった企業オーナー様に、安心していただくためのお話です。

本記事を執筆時(2020年4月初)、新型コロナ問題(COVID-19)による死者増急増や医療崩壊を避ける目的で、政府が主導し、外出自粛等を推奨したことで、多くの企業の売上が急減する事態となっています。

政府としても、給付金融資といった資金繰り助成策を示していますが、多くの企業にとって不十分な対策であり、今後、派生的な悪影響が懸念されるところです。

大きく2つポイントがあると思います。

1. 借入の増加がM&A企業価値にどう影響するか?

2. 売上・利益の減少は M&A企業価値にどう影響するか?

危機時の借入増加・売上急減のM&A企業価値への影響は?

そもそも、M&Aにおける「企業価値」とは、資本調達手段(株式か融資か)を考えずに評価する企業全体の価値ですので、同じ事業内容、同じキャッシュフローの2つの会社で借入額だけが違うならば、借入が10億円あっても、ゼロでもまったく同じ企業価値になります。

つまり、「借入が増えても減っても企業価値には関係ない」が大原則です。

そして、「企業価値」から「純有利子負債」(借入金-現預金)を引いた残りが「株式価値」となり、M&A会社売却(株式譲渡等)の対価となります。

つまり、「借入を増やしても現預金を残していれば株式価値にも関係ない」となるわけです。

しかし、今回のような「売上消滅・支出継続という異常事態下での借入増加」では、借入れたキャッシュは、人件費や家賃等として、社外流出してしまうと思いますので、現預金残高が減っていった分だけ、資金繰り難に陥る前よりも株式価値が減っていますが、「借入をしたかどうかは関係ない」「必要な経費を支払わなかったときに失う価値の方が大きい」わけです。

では、無造作に借入れを増やしてもよいのか?という疑問ですが、もし、「新型コロナ問題が収束した後、元通りの売上に戻る自信」があるのであれば、無造作に借入をした方がよいでしょう。

借りられるだけ借りて、M&A企業価値を維持するために必要な経費だけはしっかり支出し、その他は徹底的に節約し、キャッシュをできるだけ残しておけばよいのです。

資金繰りが厳しいため、人件費や取引先への支払いを遅延させたくなることも多いでしょう。

各企業ごとにケースバイケースなので、一概に非難することも推奨することもできませんが、これだけは肝に銘じたうえで個別の判断を下してください。

新型コロナ問題収束後に期待できたはずの将来キャッシュフローを痛めると、企業価値・株式価値評価に重大な悪影響を及ぼす。」という点です。

もし、無利子・無担保・無保証・元本弁済猶予で借入ができるなら、企業価値の源泉である将来キャッシュフロー獲得能力を傷めないために、積極的に借入をしてください。

M&A企業価値の観点から不要な支出」は払わないように気をつけて、手元キャッシュを潤沢に維持しておけばよいだけですので。

ただし、将来のキャッシュフローに悪影響を与えない範囲で、将来の借入返済負担を最小化しておきたい、という考えも当然のものであります。

もし、財務シミュレーションや融資実務の支援等をご希望の場合、弊社が提携している公認会計士事務所をご紹介いたしますので、お気軽にお問合せください。

余談

そもそも「M&Aでの企業価値評価は、簡単に説明すると、経常的キャッシュフロー額と、事業の安定性・成長性を加味した倍率(≒リスク反映後割引率)の2要素で計算しますので、今回のような臨時異常な原因によって一時的に売上や利益が下がったとしても、問題がなくなった後に売上や利益が回復することをバイサイド(買い手)に納得してもらえるのであれば、概ね手元キャッシュが減るだけの影響で済む」はずです。

この大原則を無視し、足元の急減した売上や利益を元に評価しようとするバイサイド(買い手)や、本来企業価値と無関係な純資産等を基礎に評価しようとするM&A助言会社は、世界標準のバリュエーション理論を無視し、自分だけ効率的に儲けようとしているので、特にこのようなセルサイド(売り手)にとって特に不利になりやすいタイミングでは、こういうハイエナさんは相手にしない方がよいわけです。

正統派M&Aバリュエーションは、非常に長い期間、あらゆるイベントを乗り越えて揉まれた理論なので、今回の新型コロナ問題ですら、適切に評価する手法が存在します。

そして、適正な評価で投資してくれるバイサイドを丁寧に探し、その評価が妥当であることを丁寧に説明するため、セルサイド(売り手)と一緒に汗をかいて努力してくれるM&A助言会社に依頼しましょう。

もし、当面、資金面に余裕があるならば、今回のピンチをチャンスに転換すべきであり、危機時における対策を講じておく絶好の機会です。このときに頼りになるのが、「事業・金融・会計・税務・法務の専門家で、丁寧に企業に潜む潜在価値を見抜いて見える化し伝える能力を持つ正当派M&Aバンカー」です。

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