2020
06.25

何か変?M&A会社売却の成功報酬計算方法

M&Aで会社売却をする心構え, M&Aのお金(価格・税金), M&Aのチーム管理, M&Aのマーケティング, M&Aの契約

M&A助言会社に支払う報酬は、基本的に①売却対価の額②料率の掛け算で決まります。これがM&A報酬の大半を占める成功報酬(M&A助言会社を頑張らせるためのニンジン)です。

筆者は長年M&A業界にいますが「最近のM&A報酬の動きは何かおかしい」と思っています。「安くて良いサービス」ならよいのですが、「安そうに見えて結局高くて、でもあまり良くないサービス」が増えているような気がして仕方がありません。

M&A助言会社の値引き競争の行方

ここ数年、M&Aの報酬については、本末転倒な値下げ競争が激化しているように思います。例えば「着手金無料」「中間金無料」「完全成功報酬」「最低成功報酬なし」「移動資産額じゃなく株式譲渡代金に対してのみ」「他社の●割水準」などです。不朽の真理「安かろう悪かろう」のはずなのに、これらが普及しつづけるのは「どこも同じ」「なら安い方」という思い込みが、セルサイドオーナー(売り手)の頭にあるのではないでしょうか?だから「値下げ競争に励む業者(でも実質的に両手2倍分をセルサイドオーナーが負担)に頼むしかなくなってきている」のだと思います。

しかし「他より安いのはわかった。でも、肝心かなめのどんなサービスが提供され、どんな便益が期待できるのかよくわからない」という印象を持ちませんか?これでは、本当のところ、高いのか安いのか判断できません。報酬が5割引きでも、手取りが5分の1になってたら「それは安くない。高すぎる」です。サービスによる便益(ベネフィット)報酬(リウォード)との相対比較で、高いのか安いのかが決まるからです。顧客にわかりにくい商品・サービスを扱う業界でよく見かける光景です。

本来、合理的な世界である事業(ビジネス)の中でもとりわけ合理性が要求されるM&Aの世界において「情熱を燃やして」「友好的に」「成約時に涙」といった情緒面ばかりがアピールされている印象を覚える点も気になります。つまり「具体的な商品スペックと期待便益はごにょごにょ、うちの方が安い、こっちおいで競争」をしているように見えてしまうわけです。具体的にどんなサービスどんな便益か、こそがクライアントにとって大事なはずなのに。

上記のような値下げ競争は、悪貨が良貨を駆逐するときに観察される現象です。誠実で有能なM&AバンカーがM&A市場から去っていき、「結局、損をするのは常にセルサイドオーナー」という図式が定着してしまう危機感を覚えます。これは、マクロレベルで俯瞰するときのM&Aの役割、産業の新陳代謝、適材適所の配置転換、若者の起業チャレンジ促進といった非常に重要な課題にとってもマイナス面しかありません。「くっつけるだけで大金稼げる」では最適化からほど遠いM&Aディールが量産されてしまいかねません。M&Aは、良い会社をさらに伸ばすためにするもの、良いM&Aは良い価格で取引されるべき、多額の売却対価を得たセルサイドオーナーは、周囲から賞賛されるべき、です

ちなみに弊社は「片手専門。両手で報酬を貰いません」と宣言してますが、これはディスカウントではありません。「過大報酬は一切いただきません」「両手報酬に伴う利益相反リスクをクライアントに負担させません」という公正性を重視しているだけで、当たり前の宣言です。むしろ弊社は「しっかりプレミアムサービスを提供し、プレミアムな結果にコミットし、フェアな報酬だけいただくスタンス」です。その方がクライアントの便益が増えると信じています。

M&Aのコモディティ化

10年くらい前、こんなことを言い出す人が増えました。「団塊世代の引退に伴ってM&Aが激増する。M&A助言で効率よく儲けるには、顧客や商品を選ぶ高級ブティックじゃなく、大量生産汎用品(コモディティ)を扱うスーパーになるべきだ。

ディスカウント戦略、つまりコスト・リーダーシップ戦略は、商品が大量生産の汎用品(コモディティ)の場合にのみ、顧客は追加便益を得られます。どこで買っても同じ商品なら、安い方がよいに決まっています。つまり、M&A助言であれば、値下げ競争に励むM&A助言会社は、平凡で零細なターゲット企業を売りたいセルサイドオーナーにのみフィットします。「どうせ変わらない。なら安い方」が正解になるわけです。

一方、「選ばれたターゲット企業(汎用品ではなく高機能性商品)」を「選ばれたバイサイド企業(高い経営能力)」に売りたいセルサイドオーナーには、値下げ競争に励むM&A助言会社はフィットしません。オーダーメイドの特注品を仕立てる高級ブティックタイプのM&A助言会社がフィットします

より大きくなるのはチェーン店です。デフレの時代、外食であれば、圧倒的に安くて、文句を言われない程度に旨いなら業界トップになれます。大事なのは商品の質よりもマーケティング(配荷(身近)、プレファレンス(安い)、認知度アップ(広告))です。しかし、舌の肥えた美食家は、チェーン店ではなく高級レストランに行きます。そっちの方が、美味しいし、健康的だし、雰囲気もいいし、一緒に行く人と会話がはずみ、結局コスパがよいと思うからでしょう。

これは普遍の真理だと思います。

セルサイドオーナーのよくある勘違い

自分の会社は選ばれたターゲット企業に違いない!」と楽観的な方向に誤解するセルサイドオーナーは心配しなくても大丈夫です。M&A市場で自動的に調整されますので。

問題は「自分の会社は平凡な会社だろう」と謙虚になりすぎるセルサイドオーナーです。こちらの方が圧倒的に多い気がします。こういうセルサイドオーナーがたくさんいて、本当はユニークな強みを持つ面白い会社なのに、スーパーに陳列させてしまい、バーゲンセールされてしまう、非常にモッタイナイ事例が後を絶たないのが、残念で仕方ないのです。

まず、自分の会社(ターゲット企業)が、どっちなのか、平凡で零細な会社なのか、ユニークな強みをもつ選ばれた会社なのか、を見極めてください。

高級ブティックで丁寧に店員に説明させるべきなのかスーパーで値札を貼って並べるしかないのか、の見極めが最初の分岐点です。

非常に重要で、かつ、意外と難しいものです。

マーケティングの鉄則ですが、ユニークな強みがあるかないか、いくら払ってもよいかは、買う方が決めるということです。逆に言えば、あるバイサイド企業(買い手)にとって希少価値があるならば、ユニークな強みはあると言ってよいわけです。M&Aの世界では平均点はどうでもよく、尖った1点だけが大事だからです。

意外と選ばれた会社って多いですよ。

その上で自分に必要なサービスを考える

ところで、「セルサイドオーナーにとって一番大事なこと」は、何でしょう?少なくとも「M&A助言会社に支払う報酬を少なくすること」ではないはずです。「ご自身のニーズを100%(以上)実現すること」ではないでしょうか?

もし「どう考えても、うちの会社は零細だし、特別な特徴もない。誰かに引き継いでもらえるならラッキー」ということであれば、とにかく安く、露出が多い方法を使えるM&A助言会社を探せばよいです。なぜなら、頑張っても結果に大きな差がないからです。純資産法とか純資産+営業利益数年分で妥協するしかないわけです。

もし「自分の会社が選ばれた会社の可能性が高い」と信じることができたら、次に、それをキャッシュに替える、つまりM&A取引を通じて株式をキャッシュに替えるため、どんなサービスが必要かを考えましょう。

まず「自分にとって必要なサービス」を考えて、次に「必要なサービスを提供してくれそうなM&A助言会社」をリストアップし、その中から「費用対効果が一番高そうな先」に決める、という順番が正解です。最後にやっと出てきたのが報酬です。想定売却額とその根拠、そのために必要な業務内容、そして報酬額が分かれば、意味のある比較ができます。あとは、ニーズに照らして一番フェアと思う先を選べばよいと思います。大事なのは比率ですよ。分子が小さいとかは関係ありません。

ゴールの設定から始め、分析し、それから手段を選ぶのが、常に勝利の鉄則です。

節約重視のセルサイドオーナーは、終わってみると手取りが少ない傾向にあります。でも、最後まで気づきませんし、終わったあとも気づきません。当然です。

M&Aではフェア(公正)が重要

M&Aのような当事者間で利害対立が生じる経済取引(ディール)の世界では、ファクト(事実)、ロジック(論理)だけでなく、特にフェア(公正)が重要です。

フェアな精神・関係」を、一番最初のステップである「セルサイドとM&A助言会社間での業務委託契約の締結段階」において成立させておくことが、とても重要です。この段階でM&Aの失敗(売れない、売れても安い、買ってくれただけ)が決まってしまうケースも多いからです。

その後のバイサイド候補との本番の交渉フェーズ等において、アンフェアな交渉(大半のケースでセルサイドが不利になる状況)が生じても、セルサイドがアンフェアなメリット(例えば着手金無料等)しかM&A助言会社に提供してないと、M&Aに精通していないセルサイドとしては、堂々と主張を展開しにくくなり、腹の底から相談できる相手を失ってしまいます。引き返せないくらい岸から離れた海に連れてこられ、真っ暗な闇夜になったとき、ふと振り返ると船頭がいなくなってた、こんな事態を想像してみてください。フェアに徹していれば、フェアが返ってきます。

安物買いの銭失い」にならないようにするには「フェア」が大事ということです。「300万円節約したつもりが、結局、具体的な専門分野の助言はできないと言われ、別の専門家を雇って500万円払ってしまった。さらに適正評価(フェアバリュー)よりも3億円も安い価格で売ってしまった」という悲しい事案にはこういう背景があると思っています。

人種や思想が異なる人が交錯する欧米では「フェア」を重視します。欧米で発展した伝統的投資銀行スタイルの片手FAは、一度に多くの案件を手掛けられないため、この「目先の誘惑を断ち切った知恵と勇気のあるオーナー経営者ほど、潜在価値に富む高値売却が可能な優れたターゲット企業を育成してきた可能性が高い」と評価し、「フェアバリュー」を届けるために必死に努力します。

M&A助言の報酬体系

M&A助言サービスの報酬は、大きくわけて、
成功「前」報酬
(アップフロントフィー(着手金)、リテイナーフィー(月額報酬)、マイルストーンフィー(中間報酬)と、
<成功「後」報酬>
(サクセスフィー(成功報酬))に分けられます。

前述のように、違いを出せるM&A助言会社(投資銀行タイプ、専門ブティック、片手タイプ)に「わき目もふらず全力を出し切ってもらう」ためには、原則として応分の報酬(「前」「後」と後の適切な組み合わせ)を支払うべきでしょう。

少し脱線しますが、基本的に、着手金等の成功「前」報酬はM&A助言会社にとって収入源としての意味は大きくありません(多額の中間報酬を受領するケースは除きます)。だからといって成功「前」報酬の無料化を強く希望されるとM&A助言会社の担当者の頭の中では「本当にM&A会社売却を実行する決断を下しているの?本当に覚悟が決まっているの?」という疑念が生まれます。つまり、本当に価値あるM&A助言サービスを提供したいと思っている担当者の脳裏に「多くの貴重な時間を失い、別案件の売上を逃すリスク」を認識させるわけです。

大事なことは、「関係者全員が公正(フェア)に徹すること」であって「フェアな報酬を約束しておく方が、後々自分の首を絞めないようにする保険」にもなるということです。M&A助言会社を「安心させる」には「着手金等」が大事で、M&A助言会社を「本気にさせる」には「成功報酬の魅力」が大事なわけです。

成功報酬が「フェア」かどうかは、双方が納得のいく形で決めればよいだけです。簡単に言えば「わたしの目的を実現するには、あなたにこういう仕事をお願いする。あなたのおかげで大きな利得を得ることができたなら、応分の報酬を払いましょう」が「フェアな成功報酬」です。それがレーマン方式かもしれないし、通常より簡単ならレーマン方式をディスカウントしても、通常より大変ならレーマン方式にプレミアムをつけてあげてもよいでしょう。

成功報酬の計算基礎として「移動資産額」がフェアなケースとは?

さて、成功報酬額の計算基礎となる①対価の額について、しばしば議論に上るのが、①-a: 株式譲渡額①-b: 移動資産額のいずれが「フェアな成功報酬に対応する①対価の額」なのか、です。

結論は、大半のケースで①-a: 株式譲渡額がフェアで、例外的に①-b: 移動資産額がフェアになるケースがありうる、です。常にどちらかが正しいとかではありません。

①-a: 株式譲渡額は、セルサイドオーナーが受け取る売却対価そのもの。
①-b: 移動資産額は、株式譲渡額に加え、バイサイド(買い手)に返済義務が移転する負債(借入金、社債、リース債務等)が加わります。つまり時価総資産ベースみたいな感じですね。

当然のことながら、セルサイドオーナーの立場からすると、成功報酬額が小さくなる①-a: 株式譲渡額を好む方が多いわけです。一方で、M&A助言会社としては、成功報酬額が大きくなる①-b: 移動資産額を好むわけです。

さて、ここに両者間で利害対立が生じます。

セルサイドオーナーの無知を利用して、または、セルサイドオーナーが難解な契約書の読解を嫌う場合など、M&A助言会社との業務委託契約書に「移動資産額で計算する」という(小さな)記載があって、気づかぬうちに移動資産額ベースの成功報酬で契約書にハンコを押してしまった、というケースもあるでしょう。

また、とにかく新規契約を獲得したいM&A助言会社には「うちは100%株式譲渡額ベース」「移動資産額は一切使用しません」と積極的に宣伝するケースもあるでしょう(最低成功報酬額が過大でないか等、別の部分で神経を尖らせる必要はありますが)。

ちなみに、弊社は、通常、株式譲渡額をベースとして成功報酬を計算しますし、創業以来、移動資産額で成功報酬をお願いしたケースはありません。しかし、移動資産額ベース成功報酬をお願いすべきケースは存在します。

では、どんなケースが「移動資産額ベース成功報酬がフェアなケース」でしょうか?

移動資産額で計算すべきケース

■ カーブアウト(事業切り出し)
事業譲渡や会社分割によって、会社全体ではなく、一部事業のみを切り出して売却する場合、そもそもデット(有利子負債)は売却元の企業に残したままにするケースがほとんどで、デットとエクイティという概念が発生しません。このようなケースでは、自動的に移動資産額ベースで成功報酬額を計算することになります。またセルサイドとしても移動資産額ベースで売却対価を得られるため、問題も生じません。例外的に、当該事業に関連する有利子負債をバイサイド企業に移転し、そのためにセルサイド企業がキャッシュを支払うことがセットになっている場合、特別なことがない限り、エクイティという概念に沿った成功報酬の計算も可能でしょう。

■ 株主によるデットファイナンス
ターゲット企業を売却する際、セルサイドオーナーが、親会社又はオーナー個人として、ターゲット企業に貸し付けをしているケースがあります。この場合、セルサイドは、M&A成功によって、貸付金の回収も成功します。この場合も、移動資産額による成功報酬の計算がフェアになると思います。

■ デット移動が重要なディール
資金繰りに窮し借入金の返済が困難な状態になっているターゲット企業を売却する場合、株式価値は1円になることもあります。また、事実上、赤字負担に加え、借入弁済義務も引き継ぐバイサイドを探索して、買収してもらうということは、セルサイドにとっては借入金の肩代わりをしてくれる相手を見つけて説得してくれた、というメリットの方が、エクイティ売却代金よりも遥かに重要です。このケースも移動資産額で成功報酬額を計算することがフェアでしょう。

成功報酬の最低保証額がフェアなケースとは?

成功報酬が「名が体を表していない」ことがしばしばあります。つまり「成功はしてないが成約はした」というケースです。成約だけでよいのであれば、相手を見つけて安い価格でまとめてちょっと事務をすればよいだけなので、人件費+諸経費+利益の合計程度で十分と思えます。500万円+50万円+200万円で、750万円もあれば、特にスキルのない人でも年間3件も成約させれば大儲けです。

最低成功報酬を要求するM&A助言会社が「成功する自信はない。でも成約したらガッツリ儲けたい」なのか、「正直、あなたの会社の規模だと通常の料率で十分な売上が立たない。だから、どうしても売りたいなら最低でもこれだけはお願いしたい。」なのか、です。

前者は、最低成功報酬を3000万円くらいに設定するかもしれませんし、後者は最低成功報酬を500万円くらいに抑えるかもしれません。

後者ならフェアな最低成功報酬と言えると思います。

最低成功報酬に関して、特に気を付けたいのは、株式売却代金が少額になりそうな場合で、高額の最低成功報酬を設定する状況です。つまり、株式売却代金よりも成功報酬が大きく「お金を払って引き取ってもらう事態」がフェアかどうかです。これは、もし、セルサイドオーナーが多額の借入の保証人になっていて、株式売却代金を受け取るよりも借入金の保証人から外れることが最重要なニーズであって、かつ、借入を引き継いでくれるバイサイドを探索するのが非常に困難な場合であれば、もしかすると最低成功報酬が3000万円もフェアかもしれません。要は、セルサイドオーナーが受けるメリットと相対評価して納得できるならフェアです。

ちなみに、弊社は「成功しないのに成功報酬をガッツリ貰うのはおかしい」という考えで、最低成功報酬をお願いすることはありません。

両手の成功報酬がフェアなケース

M&A取引において、セルサイドオーナー(売り手)とバイサイド企業(買い手)は、少なくとも株式譲渡対価の金額に関しては、利益が相反します。どんなに上手く誤魔化しても、絶対になくなりません。お金が貴重なものである限り。

本来、セルサイドオーナーは大企業であるバイサイドよりも交渉力が弱いケースが多いでしょう。またM&A助言会社からすると、セルサイドオーナーは1回だけのお客さんで、バイサイドは太客候補です。つまりバイサイド企業を優遇するインセンティブを持つのがM&A助言会社です。そのため、セルサイドから報酬を貰うならバイサイドから報酬を貰ってはいけない、が大原則です。

しかし、両手タイプのM&A助言会社はたくさん存在します。筆者は、なかにはフェアな両手タイプの契約もありうる、しかしアンフェアな両手タイプの契約も多いと考えます。

これは、簡単に言うと、最低保証額と同じ議論で整理できます。つまり、「正直、あなたの会社の規模だと通常の料率で十分な売上が立たない。だから、どうしても売りたいなら買い手からも報酬を貰うことを許してほしい。」というケースでしょう。つまり、売上が1億円もないような会社で、株式譲渡対価が1000万円しか見込めないと、両手で5%ずつ貰ってようやく100万円の報酬です。なんとなく、株式譲渡対価が2億円を超えるならばアンフェアと言ってよいと思っています。両手タイプは、ほぼ仲介(マッチングと事務)しかしませんので、片手タイプよりも仕事が極端に楽であって、しかも簡単にまとめやすい純資産法等を中心に成約だけを目指し、セルサイドオーナーに、高評価の株式売却代金が振り込まれることは稀です。それで2000万円も儲けるというのは、いくらなんでも貰いすぎという評価ができるでしょう。この仕事に必要な人材コストは月額30万円ですので。

つまり、両手で報酬を貰うことを許容するのがフェアと言えるのは、ターゲット企業が零細企業の場合のみでしょう。どんなに高度なサービスを提供しても結果に大差がないし、両手取りを許容してあげないと、受けてくれるM&A助言会社がいなくなって売りたくても売れなくなるからです。

ただし、他の値引き要素とセットで考慮しないといけない点は忘れてはいけません。バイサイドは買収の予算として、株式対価+仲介手数料+DDコスト+契約コストがいくらまでなら、という計算をします。つまり総額予算から仲介手数料(買い手分)等が控除されて残った株式対価を受け取ったあと、仲介手数料(売り手分)を支払うことになるため、事実上、セルサイドが両手分を負担しているような状態になります。●●無料と言われて飛びついたものの、結局「安物買いの銭失い」にならないようにしてください。

他社比●割引きがフェアなケースとは?

あらゆる商品・サービスの価格は、お客さんが決めるものですが、当然にして、商品・サービスの供給者も赤字価格では提供しません。コスト+利益以上の価格でなければ事業を継続できないからです。

つまり、M&A助言会社であれば、最大の費用である人件費を大幅に削減しても、セルサイドオーナーにM&A会社売却させてあげられる独自の仕組みを作った結果、圧倒的にコストを抑制でき、かつ、売却価格等の重要条件も高級M&A人材が動いた場合と同等の成果を出せる場合には、他社比●割り引きで、フェアというか、フェア以上の格安価格と言えるでしょう。ただし、まだM&Aは機械的に処理できる状態からほど遠く、人件費を大幅削減しつつ、成果も追求できるかというとおおいに疑問です。

まともなM&A助言会社であれば、案件主担当者(ディレクタークラス)1人につき固定給だけで1500万円から2000万円くらい負担するからです。こういう使えるM&Aバンカーは、月額30万円とか50万円といった低スキル人員向け給料に下げられたら、即座に転職します。残るのは転職しても30万円の人だけでしょう。

つまり、売上単価を減らす(成功報酬●割引き)以上、確実に何かを妥協しているはずで、それがセルサイドオーナーのニーズを実現するために必要なサービスのために必要なコストを削っているだけであれば、たとえ5割引きでも高い可能性があります。公正価値(フェアバリュー)の半額で売られたら、成功報酬が半額でも全然うれしくないはずです。

ちなみに、弊社は「値引き競争に励むM&A助言会社による想定売却額の何倍で売れたか」を重視しており、セルサイドオーナーのニーズに応じたプレミアム・サービスをご提供してますので、●割引きというディスカウントは一切してません。報酬値引き業者による想定売却額(主に純資産ベース価格という公正価値から大幅値引きした売却額)の3~5倍の価格(高めの公正価値)で売却に「成功」してますので、割引きする必要がないからです。受託案件を弊社独自基準で選考させていただいている面もありますが、セルサイドオーナーのニーズを実現するための差別化に成功している点が大きいと考えています。

「なぜ3~5倍で売れることがあるのか?つまり、なぜ公正価値の1/3から1/5で売られてしまう会社があるのか?」についてはコチラをどうぞ。

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