2018
03.06

ウィークフォーム市場効率性仮説から見える会社売却価格を高める技法

M&Aのお金(価格・税金)

マイノリティ株式取引市場における市場効率性仮説

M&Aという過半数の議決権(=会社経営権)の移動を伴う株式譲渡において、セルサイド(売り手)が最も気になるのは「自分の会社がいくらで売れるのか?」ではないでしょうか。

色々な株式評価理論が存在し、また、実際のM&A取引市場(特に中堅・中小企業のM&A市場)では、このような理論を無視した価格で取引が成立することもあり、「一体、自分の会社を高く売るにはどうすればよいのだろう?」と途方に暮れる方もおられると思います。

まず、そもそも、株式の価格はどのような性質を持っているかを理解することが出発点です。

いきなり経営権の移動も伴う上級編の株式価値の形成過程についての理解をする前に、初級編として上場株式の株価形成過程についての理解を深めてみましょう。

効率的市場仮説という非常に有名な上場株式市場の「市場の効率性」についての議論があります。

これは、『市場は、影響を与えうる情報が完全に開示されてさえすれば、すべての情報が適切に瞬時に価格に反映されるので、超過収益(人よりも株式投資で儲ける)を得ることが困難になる』という前提を、どの程度信じてよいかという議論です。

 

株式市場の効率性度合で、ストロング型からウィーク型と研究者が立場を変えています。
(注意点: これは株式投資家(株式を買う人)にとっての議論です。)

ストロング型効率性では、株価は公及び内輪のものを含んだ全ての情報を反映していて、超過収益は誰も得ることができないことになる。

ウィーク型効率性では、過去の価格の分析から未来の価格を予想することはできないことが仮定される。株価の履歴やその他の履歴に基づく投資戦略を用いて長期的に超過収益を稼ぐことはできない。何らかのファンダメンタル分析が超過収益をもたらすことがあったとしても、テクニカル分析の技術が超過収益を継続的に生み出すことはない。

つまり、ストロング型を信じるならば、バークシャー・ハサウェイのウォーレン・バフェットのような情報を基礎に判断を積み重ね巨万の富を積み上げる人が存在するはずがない(つまり、悪い事をしているはず)ことになります。

そのため、バフェット氏のようなファンダメンタルズ分析を軸に超過収益を獲得し続けてきた投資家が存在しているという事実が、ストロング型の効率性仮説にはかなり無理があることを証明しています。

一方、ウィーク型は、現在の市場は完全に効率ではなく、現在の価格に将来の価格の変動を予想させる情報がすべて織り込まれていないことから、将来の予想をできる投資家は超過収益を獲得することができる。というバフェット氏の存在と辻褄があうということになります。そのため、効率性市場仮説ではウィーク型に軍配が上がると考える研究者が多いようです。筆者もウィーク型を支持する立場です。

ファンダメンタルズ分析(財務分析とかマクロ・ミクロ経済分析)が得意である(はずの)プロ投資家にお金を預け、自分の代わりに運用してもらう投資ファンドの成績が期待以下になるケースが多発したため、株式投信はファンダメンタルズ分析による超過収益獲得を目標としたアクティブ運用の預かり資産が激減し、かわりに運用手数料が低く、単純に株式指数等を参照するコピーファンド(パッシブ運用)の投信が隆盛を極めています。いわゆるインデックス投信と呼ばれるものは、「多くのプロ運用マネージャーは将来を予想して適切な銘柄選択をできない」という諦めが背景にあると言えるでしょう。

アクティブ運用が失敗しやすい背景として、「環境変化のスピードアップ」というものが挙げられると考えています。これは、将来の株価の変化の「原因」は今すでに芽が出ている、その原因に「対処」することで会社は従来よりも売上・利益を拡大できるかもしれないし、「対処」できなければ逆の目の可能性も高い、つまり「インターネット」「グローバル経済」「人口問題」等といった大きな環境変化により「容易くファンダメンタルズ分析をすることができない」という状況が10年前よりも激増していることを意味します。運用マネージャーが超過収益を獲得するためには、株式発行会社の経営者の能力を目利きする能力、「今起こりつつある環境変化」に対する「具体的な対処能力があるかどうか」を目利きする能力が極めて重要になってきているといえるわけですね。

 

『価格に影響する情報の一部しか届いていない』

『価格に影響する情報は届いていても正しく伝わっていない』

『価格に影響する情報が正しく伝わっていても誤った行動をする人もいる』

上場会社という規制で情報開示を強いられる会社に対し、運用のプロと呼ばれる人でも大半はこの程度であるということをしっかりと理解してください。

 

マジョリティ株式取引市場での株価形成を理解するための修正

さて、さきほどご説明したのは、上場株式を少数売買(マイノリティ投資)する市場での効率性の話です。一方、このサイトで情報収集をされている方は、自分の会社(非上場会社)の会社経営権(マジョリティ投資)を売却する際に「どのような相手に」「どのような方法で」売却すれば潜在能力をしっかりと評価してもらった好条件(適正評価=フェアバリュー)での売却が可能になるかを知りたい方が大半だと思いますので、上記の理論から導かれるロジックを基礎として、一定の修正をしながらご自身の目的達成のために活用するという工夫が必要となります。

上記からわかることとしては、
■ マスコミや毎四半期毎の取引所指定の情報開示を強いられる上場会社であってでも、ファンダメンタルズ分析によって超過収益を得ることが可能である、上場会社であっても、将来の業績変動を予想するための情報は全く不十分な開示・伝達・評価になっていること
■ 「非難されにくい無難な過去の分析」といった、上司の評価が気になって仕方がないサラリーマンによる分析では、超過収益のネタを教えてあげても正しく理解できない、または理解しても不確実なので握りつぶすしかない、実行する能力がないため、正しいバイサイド(会社)を選んだとしても、ライトパーソン(担当者)に、正しい提案をしなければ、無難な評価(安値での評価)しか得られないこと

 

株価とは、将来への期待不確実性(リスク)で説明できるものです。

 

会社を高く売りたいなら、将来の期待が上方に大きく広がっていることを的確に示す、かつ、不確実性を限定的にしておく、または、するための方法を整理しておくというM&Aの準備が重要であるということになります。

M&Aのセルサイドのための修正
■ 上場会社の情報開示でも不十分、非上場会社であればなおさら。何も準備しなければ評価されないのは当たり前
■ あなたの会社の個別事情についてまで熟知しているバイサイドは世の中に存在しない
■ 環境変化が激しく、バイサイドに期待と不確実性を評価するための十分な情報が伝わりにくくなっていて、その情報を網羅的に伝えるのは非常に大変
■ 逆に言えば、環境変化とは、対処できない競合を尻目に差を縮め追い越すチャンスの宝庫でもあり、適切な対処をしている、または、適切な対処方法があるのであれば、高く評価される可能性がある
■ 超過収益(潜在価値を織り込んだ適正評価 – 純資産ベースの安値価格)という報酬は、事業内容や財務諸表といった追加的努力なしでできる簡易な開示に加え、具体的な環境変化とそれに対するロジカルな対処方法についての実行・開示という貢献によってもたらされる
■ 環境変化に対応し、会社を成長させる方法が見つかっているとしても、それを実際に実行する能力を有するバイサイド候補に絞り込んで深い提案をしなければ意味がない(下手な鉄砲数打ちゃ当たるではない)
■ 株価は、将来の期待と非確実性で決まるものなので、「確実で大きな期待」と「不確実で小さな期待」では、同じ足元の純資産や売上・営業利益が同額の会社であっても、株価は何倍にも差が広がっても全然おかしくない
■ 確実性が高く大きな期待を探す、それを実現できそうなバイサイドを探す、両方をサポートしてくれる人を探す、ことこそが、M&Aで会社を高く売るための王道

 

 

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