2018
09.14

売り手にとって最適なM&A助言会社を合理的に選ぶ方法(3/4)

M&Aのお金(価格・税金), M&Aのチーム管理

M&A助言会社の収入

さて、いよいよM&A助言会社の収支構造を細かく見ていきましょう。

と、その前に、大事なウンチクをご紹介します。

M&A助言は報酬に関する規制がありません。しかもお金を払う顧客がM&A初心者であるケースも多いので、業者都合を通しやすく、貢献と報酬のバランスを欠きやすいのです。M&A弁護士に聞くと、昨今、トラブルが続出しているようです。業務量、難易度、成果の程度が「貢献」でしょうから、それに応じた「報酬」にすべきですが、評価が難しいためか中堅・中小M&Aでは、一律の料率表が適用され続けています。業務量が少なく、簡単な仕事で、成果の程度も小さいなら、つまり貢献が小さいなら報酬は少額で良いはずですし、逆もまたしかりです。トラブルが続出してるとなると、せめて不動産仲介程度の規制は必要なんじゃないかという状況に至っているようです。

考えられる対策として、例えば、EBITDA〇億円以上の案件を担当するには資格要件を課すとか、マッチング以外のサービスがないなら報酬上限(1-3%とか)を課すとか、開示情報不足での初期提案(=投資自己責任の原則が崩壊)をするなら両手契約は禁止するなど、崩れているバランスを整えるための規制強化が望まれます。結果として、セルサイドはもちろん、バイサイドも不測の損害から免れることができやすくなると思います。

 

片手FAの収入

FA(片手業者)の報酬構造は単純です。
クライアントであるセルサイドまたはバイサイドの一方から報酬をいただくので片手業者と呼ばれます。特に規制やルールはないため、報酬の金額や料率は、難易度業務量に応じてクライアントとの交渉で決めます。

片手セルサイドFAの収入

セルサイドFAは、多くの時間を割いて経営・財務分析、膨大な資料作成、数多くのバイサイド候補の探索・交渉等をする一方で、セルサイドは途中でM&Aを中止できますから、腕に自信のある業者ほど、着手金を要求する傾向にあります。自信のあるFAは、貴重な時間を安売りしないのです。クライアントの要望で、着手金を抑えたい場合は、マイルストーン・フィーという中間報酬を発生させ実質的に分割払いにする等の変則形もいくつかあります。最後に、M&A取引が成立した場合にのみ成功報酬が発生します。ちなみに、有名なレーマン方式という成功報酬体系は、本来、大規模案件でのフルサービス型の片手FAに適用することを想定したものです。レーマン方式とはその名の通り、米投資銀行Lehman Brothersが開発した料率体系で、500万ドルまで5%、その後、1,000万ドルまで4%、5,000万ドルまで3%、1億ドルまで2%、1億ドル以上は1%と徐々に料率が小さくなっていく料率体系です。1億ドル以上の案件を扱う大手投資銀行向けの料率体系と言えるでしょう。日本では「5億円まで5%のレーマン料率表」が定着していますので、1ドル=100円として日本に輸入されたということです。

ところで、遠くない将来、単なるマッチングはAI(人口知能)が担当するとして、マッチング以外のサービスの高度化・範囲拡大とともに貢献度合に連動した合理的な報酬体系にシフトしていくのかもしれません。M&A助言も高度に細分化・専門化されたスモールM&Aブティックハウスの時代が到来するかもしれまんね。売却検討を開始したセルサイドは、一番フィットした〇〇特化型M&Aブティックハウスに頼むか、「安い(報酬)・早い(高速マッチング)・相場(売却額)」のAI(人口知能)に頼むかという選択肢になる世界を予想します。

「AIなんて機械に会社の将来を任せたくない。」「財務諸表を読めない、ファイナンス理論もわからない、事業経験もない修行不足のサラリーマンに任せたくない。」という方は、M&Aブティックハウスから選ぶということでしょう。

 

片手バイサイドFAの収入

バイサイドFAも、着手金マイルストーン・フィー成功報酬という構造が一般的でしょう。セルサイドは直接払わないので意識外になりやすいですが、結局、バイサイド報酬も、セルサイドが実質負担しているようなものなので、概要は把握しておいて損はないと思います。

報酬総額はセルサイドFAよりも抑制されるのが一般的です。資料のチェック等の業務(専門性さえあれば可能な業務)の比率が高いためでしょう。

また、バイサイドから見ると、M&A担当部署の臨時派遣スタッフ的な位置付けなので、毎月報酬のリテイナー・フィーや中間報酬のマイルストーン・フィー等が厚めになり、最終段階の成功報酬は相対的に抑えるというバランスが合理的です。高額成立の方が報酬が増える料率表だと、クライアントとベンダー間で利益相反になりかねないので、成功報酬を固定額としたり、目標額を下回ったら加算等と工夫するケースもあります。

M&Aに習熟しているバイサイドの場合、自力で処理できるので、バイサイドFA報酬が発生しないケースもあります。投資ファンド頻繁にM&Aする事業会社(フリークエント・バイヤー)のケースです。実質的にセルサイドが負担するのと同じなので、バイサイドFAについてもセルサイドFAを通じて正確に理解するように努めましょう。

 

両手M&A仲介の収入

M&A仲介も基本的には同じ構造です。着手金マイルストーン・フィー成功報酬で構成されます。FAと決定的に異なるのは、セルサイドとバイサイドの双方から報酬を受領する点です。バイサイドからも報酬を受領できること、調査・分析・資料作成・ストラクチャリング等の専門的業務が片手FAとの対比で僅少であることから、セルサイド向けには着手金無料にできるケースもあります。一部のM&A仲介業者の中には、これら以外にも情報提供料等という名目の報酬を複数のバイサイドから受領する業者もいます。また、バイサイドとの間でも業務委託契約を早めに締結しておきたいので、早めにバイサイド候補を1社に絞り込む傾向にあり、「競争環境」が消滅するのが早い点が最大の難点と言えるでしょう。ちなみに、バイサイドが負担するM&A報酬は、実質的にセルサイドが負担しているのと同じ(受領金額は純額なので)です。つまり、片手FAなら5%で済む可能性(投資ファンドや自力買収可能なプロ事業会社のケース)がある一方、両手M&A仲介にすると二倍の10%が最低でもかかることになります。さらに、それ以上に業務のクオリティ次第で売却額の多寡が大きく左右されるので、結果としてコスパが悪くなりやすいと言えます。目先の少額出費を避けたい一心で思考停止に陥ることなく、総合的に費用対効果を評価して報酬の支払い方を検討することを強くお勧めします。あと、情報提供料はトラブルになりやすく、また、短期マッチングのために採用する手あたり次第提案は「出回り案件化」という甚大リスクを内包しています。将来、再度M&A会社売却にチャレンジする道を狭めてしまうリスクがある点も覚悟できる場合に限定して、そういう動き方をする両手M&A仲介に依頼すべきでしょう。もちろん、両手M&A仲介会社にも、誠実かつ優秀なM&Aマンは沢山います。ただし未経験者が多く、短期売上至上主義の企業風土になりやすいため、外れ確率が高めである面は否めませんから、担当者(個人)を目利きする目を養ってから相談すると不測の損害、取返しのつかないダメージを避けられると思います。

10年くらいのうちに、非常に安い報酬でM&Aによる会社売却ができる時代が来るかもしれません。膨大な企業データとM&Aデータを組み合わせ、M&Aマッチング専用のディープラーニングモデル(AIモデル)を賢い人が開発し、マッチング・プラットフォームを構築し、M&Aプレイヤーを囲い込んでしまえば、「条件は相場でよい。とにかく売りたいというニーズ」は充足できてしまうでしょうから、報酬料率は5%ではなく、0.5%まで落ちても不思議はありません。営業マンの足よりもデジタルデータの方が高速に動けますからね。単純マッチングの価値は逓減していくはずです。

 

M&A助言会社の支出

片手FAであれ、両手M&A仲介であれ、サービスを提供するために必要な支出は、人件費家賃以外、情報端末利用料、通信費や交通費程度の軽微な経費くらいしかありません。マス広告セミナー、テレアポ、DM等によってセルサイド相談を集めるタイプのM&A助言会社の場合には、広告宣伝費を回収する必要がありますが、費目のラインナップは似たり寄ったりかと思います。

重要なのは、M&A助言会社のタイプによって、提供業務のクオリティがまったく異なり、人材に求める水準もまったく異なる点です。

例えば、クオリティを重視するタイプの片手FAであれば、最高水準の月額給与所定ルールの賞与となるはずで、求める人材像は、M&Aに関連する高度な専門知識・スキルを持つのは最低条件、さらに、開拓力、ネットワーク、提案力、交渉力、業界スペシャリスト、ファイナンス的思考そして課題発見・創造的解決力等、チーム内での役割に応じ濃淡はあるものの、個々人に幅広い知識・スキル・経験を要求するはずです。

その真逆に位置する、テレアポ営業・訪問営業といった活動量を重視するタイプの両手M&A仲介の人件費は、最低水準の月額給与厚めの賞与配分となるでしょう。求める人材像は、行動力や誠実そうに聞こえる話術等を持つ人になるはずです。

月額給与水準の違い等から、通常、FA一定以上の規模の案件しか手掛けられないという結論に到達します。仮に5人のチームとして、月額給与だけで1,000万円の負担となると、半年かけて2,000万円を稼いでも赤字確定です。そのため、通常はEBITDA(償却前営業利益)が5億円以上で、M&Aの取引額が20-30億円以上、報酬も1億円以上になる案件に限って受託するのが基本となります。また、高いクオリティのサービス提供を受けられますが、1案件当りの着手金は500~1,000万円以上要求されることが多いと思います。投資銀行以外の金融機関系FA(銀行や証券会社)は、もう少し小さい規模の案件も受託してくれるでしょうが、やはり一定の規模がないと受託してくれません。

一方で、固定給を徹底的に抑えたタイプのM&A仲介であれば、零細・小規模案件でも扱いやすくなります。低い固定給だけれど結果を出せば賞与で稼げるという期待で異業種から移ってきた人材が多くなりがちですから、業務クオリティFA比で低くなりがちです。しかも、双方代理リスクを抑えるために業務範囲を限定(事実上マッチングのみ)しますので、徹底的に活動量を重視することになります。

結局のところ「適正価格で売却したいのでクオリティは必要だけど、高額な着手金は払いたくない」という中堅・中小企業のセルサイド向けには、独立系M&Aブティックハウス(片手FA限定)が絶対オススメとなります。冒頭の理想的なA社が該当するのがこのタイプです。

弊社も、ユニークな強みを伸ばすM&Aに特化しているという特徴を持つ、独立系M&Aブティックハウスに分類されます。表面的な規模は不問、あくまで潜在価値を重視して受託するかどうかを判断します(お断りすることもありますが、必ず「M&A的に惜しい点」「改善方法の案」などをフィードバックします)。

セルサイドにとって独立系M&Aハウスが良い点は、投資銀行出身者が中心となって動いてくれるケースも多く、結果としての圧倒的なコスパが可能となる点です。その場合、投資銀行等にいた時にMDとかDクラスの担当者かどうかが重要ですので、主担当候補者の意欲や能力を確認してから依頼しましょう。弊社もそうですが、M&A助言担当者が従業員ではなく役員としての身分であることが多く、残業時間等の制約がないため妥協のない仕事をしやすい点も、独立系M&Aブティックハウスの利点です。着手金等の初期負担も総合的に調整してくれる融通があるのも利点の1つでしょう。

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