2019
11.12

M&Aコラム:「保守と革新の対立」がM&Aに及ぼす影響

M&Aで会社売却をする心構え

永遠に終わることのない対立のひとつに、「保守と革新の対立」があります。

どちらも正しく、どちらも時に弊害になるものです。

ところで、M&Aとはそもそも「革新そのもの」ですが、日本では、「あるべき革新の効果が阻害されやすい構造問題」が実在する点、会社をこれから売却しようとしているオーナーは、頭に入れておいていただき、適切な対策を講じていただきたいと思ってます。どんな課題にも解決策はあるものですので。

 

M&Aという革新強制ツール

M&Aでは、少なくとも、現オーナーから新オーナーに経営権が移動します。M&Aの背景が事業承継であれば社長も交代するケースが多いですし、新オーナーのメリットを実現するため、仕事の範囲、やり方、役職・報酬含む人事制度等、なかで働く役員・従業員の方々にも、さまざまな形で「革新に伴う負担」を強いることになります。

放っておいても成長していた人口ボーナス期が終わりを告げてから長い月日が流れました。失われた20年が過ぎ去り、次の10年も失おうとしている流れにあります。「M&Aという革新強制ツールをどう使うか」が、将来の日本経済を左右すると言っても過言ではないと思います。

ところで、日本で浸透しやすい主張は、「保守に傾きやすい側面」があります。

というのも、日本には「革新に伴う変化やストレスを嫌う傾向」、「革新への抵抗が生まれやすい土壌」があり、マスコミ等もとりあえず「保守」の主張を展開しがちです。「保守」に傾くということは、「旧来型産業や大企業への肩入れ」を意味しますから、ややもすると、「新規性の高い事業、新たに生まれた優れたアイデアの保護をないがしろにすること」も包含しています。変化を嫌う国民の投票で選ばれる議員も痛みの伴う革新は票を失う政策なので、進んでやりたくありません。結果として、少数の起業家が正当な評価でM&A会社売却を成功させるよりも、大企業が安く新アイデアを買って、多くの従業員の雇用を維持する仕組みを優先することになるのです。

これが、今の日本、これからの日本に、大きな大きな問題を提供するわけです。

 

起業とM&Aが国民の将来不安を解消させる説

①大企業に眠る優秀人材を起業家に転身させる、
②成功した起業家がいるからこそ次の起業家が生まれる、
③新興国に任せるべき産業からこれから需要が増える産業に人材をシフトさせる、
④テクノロジーを駆使して生産性を向上し人口減の中でも国民が安心して将来を見通せる経済を作る、
等が望まれる日本の未来像だと思います。

時短で分母を減らして生産性向上しました!という弥縫策よりも、ずっと効果があるはずです。上記は生産性の分子を増やし分母を減らしているのですから。持続するし応用もききます。有能なビジネスマン比率がどんどん向上し、大企業サラリーマンという不安から解放されて自立できる自信が芽生えます。起業に成功したら大金もらえるのは当然のニンジンです。起業に失敗した場合のセーフティネットも、転職市場がさらに活発化してるはずで問題ありません。

しかし、世界の製造機能の中心が新興国に移り、先進国は高付加価値サービス業、新テクノロジー事業へ舵を切っているのに、日本だけが取り残されて、周回遅れになっているという事実を認識していながら、20年も30年も抜本的な対策が講じられない、という絶望的、危機的状況なわけです。

 

保守傾斜が生む歪み

起業とM&Aは、重要な課題解決策の1つです。

M&Aの売り手となるセルサイドオーナーは、さまざまな想定外のトラブルや資金繰りに頭を悩ませ寝られない夜が続いた時期もあるでしょうし、個人保証を負って多額の借入をしたこともあるかもしれません。多大なるリスクを負担し、市場を創造したり、商品サービスを工夫によって差別化するなど、サラリーマンには想像もできないようなリスク負担と努力投入を長期間継続してきたわけです。

(筆者は、巨大企業のサラリーマンを経験しましたし、金融機関や有名コンサル会社でのアナリストとして、多くの国内外企業を分析していたので、なかなかの物知りと自負してましたが、今から思えば恥ずかしいほどのアマチュアだったと思っています。実際に、会社を興し、商品を用意して顧客を見つけ、社保を払い税金を納め、資金繰りに頭を悩ませた経験のない人が管理人の域を出て経営者になるには、一定の準備期間と適切な課題提供と客観的サポートが必要不可欠という結論に至りました。)

さらに、税制等が原因となって零細企業天国となっている我が国日本の中で、M&Aで会社売却できる程度の規模まで育成することに果敢に挑戦して成功したオーナー社長は、本来ヒーローになるべき勇者なはずです。

しかし、会社を売ることに恥を感じたり、高く売ることで守銭奴扱いされたりと真逆の冷遇を受けるケースがあるのは、非常に残念なことであるとともに、日本の将来についての心配が募る次第です。

 

戦時の将タイプ経営者不足という大問題

人口減も問題ですが、これは所与の問題であり、簡単ではないものの解決可能な課題です。もっと根が深い問題が、「経営者不足」という問題です。

保守傾斜によって不利になりやすい中堅中小セルサイドとしては、「経営者不足」という問題を解決しておかなければ、ますます安売りせざるを得なくなります。

代表取締役という名刺を持っていれば「経営者」になれるわけではありません。

管理人ではダメなのです。安定している大企業ならOKですが、中堅中小企業のM&A後のかじ取りに成功するには、経営者である必要があります。

平時の将戦時の将という区分がありますが、管理人はどちらにもなりえません。

M&Aという革新ツールを操れるには、「戦時の将である経営者」が必要不可欠です。

しかし、探すのが本当に大変です。

起業もしたことがない人に、戦時の将はなかなか務まりません。

しかし、M&Aという大きな変化を操って、ポテンシャルをしっかり引出せる真の経営者とはこういうタイプです。

真の経営者は、本当に高すぎる場合は別として、「価格が高かったからM&Aに失敗した」等という言い訳はしないはずです。「あの時にもっと早く気づいて、これをこうしていたら」という反省があったとしても。

 

真のM&Aアドバイザー不足という大問題

M&Aアドバイザーにも重責があると認識すべきでしょう。

M&Aアドバイザーは、「付加価値が低くても契約通りに相手を見つけるだけで多額の報酬をもらえる、使い捨てのサラリーマンを多数集めて、案件さえ見つければ細かく儲けられ、数撃ってたまに当てる楽な商売」ではなく、本来、上記のような問題を解決しながら、より望ましいM&Aの成立に努め、日本経済の発展に寄与すべきですが、残念ながら多くのM&Aアドバイザーは、自ら起業したことすらないサラリーマンです。できる道理がありません。

これも人口減問題と根が同じで、団塊世代のオーナー社長の引退が大量発生し、経験の浅いアドバイザーでも安値固定なら会社を売れる、採算を取りやすくなったことで、両手仲介やネットマッチングサイト等の新興タイプが多数登場したことに起因しています。大量処理、確率で成功、資金が集まる、サラリーマンが集まるという連鎖です。

これも良し悪しで、平凡な零細中小企業にとっては昔は存在しなかった会社売却チャンスが提供され、一部のユニークな強みをもつ中堅中小企業にとっては価格の天井がじわじわ下がってきて大迷惑という弊害になっています。

そのため、説明を省略できる同業だけではなく、異業種や投資ファンドや海外企業等、広い視点で売却先を探し、提案・交渉する力が、セルサイドFAに必要になってきています。

また、事業は単独でも超複雑構造であり、さらに革新が加わり、連携が加わります。さながらカオスとなるのがM&A交渉ですが、これを紐解き、具体的アクションにつなげられる状況に変えておくサポートも、セルサイドM&Aアドバイザーの職責に含めるべきでしょう。他にいないので。特にオーナー個人の特色が色濃く出やすいオーナー系中堅中小企業ではなおさらです。「外部から見てもわからないので怖い、だから、安いなら買う、または買わない」になるのです。

 

セルサイドがやっておきべき準備

・売る会社の中に眠る「生え抜き人材」を後継経営者候補として育てておく(オーナー社長ではなく、経営チームの1人としてならハードルはグっと下がる)

・単独でもできる改善施策の立案・実行によって、社内人材の革新耐性を高めておく(変化を嫌って会社を辞める人が出にくいように)

・新しいテクノロジーを活用した生産性向上にチャレンジしておく(多くの日本企業はIT等のテクノロジーの使い方を間違っている)

・税務だけを気にする管理体制から、外部の公共性のある資金が入ってきても耐えられるマルチな管理体制へ移行しておく(これも買う方からすると困る)

などといった取り組みが望ましい準備活動の例となります(個別企業ごとに大きく状況が異なるので、慎重に検討して準備内容を決定すべきです)。

 

弊社SCAの特徴

■多岐に亘る事前準備を丁寧にサポートできる企業価値向上コンサルティング

■セルサイド特化型の中堅中小企業向け投資銀行スタイルのM&Aアドバイザリー

という2つをミックスすることで、コスパが極めて良くなります。

手前みそですが、弊社が日本初で創り上げた、ユニークな会社を売却したいと思うオーナー様向けには最適なM&A助言スタイルと考えています(一定の準備負担が生じるため、平凡・零細企業向けにはフィットしません。その場合、最低報酬がなく、料率の低いネットマッチング業者等から可能性を検討してみてください。利益相反のない片手スタイルで受託してくれる業者が望ましいでしょう)。

事実、「新興タイプM&A助言業者からの提案より、遥かに満足できる形で会社売却に成功できた!!」というお声を多数いただいています。

 

 

 

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