2020
06.01

「ヒトと違うこと(差別化)」をしないとM&A会社売却でも成功できない?

M&Aのお金(価格・税金)

「人の行く裏に道あり花の山」

マイケル・ポーターが提唱した3つの競争戦略に「コストリーダーシップ戦略」「差別化戦略」「集中戦略」があります。「コストリーダーシップ」は市場内リーダー、つまりトップ企業が採用する戦略です。中堅中小企業にとって重要なのは、つまり「差別化戦略」です。「ヒトと違うことをするから勝てる」です。

グローバル・ニッチトップ企業」が、M&A市場で高く評価されやすいポジショニングの1つなのは、差別化による強みが世界中に適用されるビジネスを運営していて「将来キャッシュフローの伸びと安定性が見込めるから」です。

今回は「M&Aと差別化戦略の関係」について少し深堀りしたいと思います。

会社売却を検討されているオーナーとしては、この「差別化戦略」を同時に2つの軸で検討しておくべきです。

■ 1つめの軸は、売却対象会社(ターゲット企業)の「事業自体の差別化
■ 2つめの軸は、M&A市場という資本取引市場における「売り方の差別化
です。

まずゴールから考える

まずゴールから考えましょう。会社売却を検討されているのであれば、ゴールは「良い相手に、良い条件で売ること、でも大きな問題なく、売れなかった場合にも配慮して」だと思います。これを具体的に設定するのが最初のステップです。

次に、ゴールにたどり着くため何をすべきか、具体的な手段の選択と準備活動を考える、という逆算する流れが正解ではないでしょうか。

簡単そうに聞こえますが、実際には複雑で、しかも多くのセルサイドオーナー(売り手)はM&A初心者なので、思考停止に陥り、なんとなく「人の行く道」を選んでしまいます。「みんなと同じだから安心」という思考停止ですが、人の行く道に「花の山」が残されているわけがありません。

「高く売れるはずもない方法で、売れなかった場合の被害も考慮せず、思考停止状態で、丸投げで売り始める」が、自分でゴールを設定せず、目の前の手段に飛びつくことによる、典型的な失敗パターンです。

「良い相手」に、「良い条件」で売る方法

良い相手を選ぶ」、「良い条件で売る」のいずれについても、しっかりと市場・競合・事業の状況を客観的に把握・分析した上で、合理的に狙いを定めて準備し、最適な売り方で売らないと実現は難しいわけです。

M&A市場というのはある意味で、上場と未上場の中間地点であり、半分くらいパブリック性(公共性)を要求されます。また、未上場企業の内情は誰も知らない以上、「知らないものは保守的に」がバイサイドの当然の心理です。マズイ売り方を採用すると、容易に治癒できる欠陥を指摘され安値売り、情報開示不足で潜在価値を全く評価されず安値売り、シナジーの薄い相手に売って安値売り、M&A後の経営能力に自信のない相手に売って安値売り、という事実上の失敗に直結します(「買ってくれる、廃業せずに済む」とほっとし、大半のセルサイドオーナーは売ってしまいますが)し、もっと悲惨なのが、結局売れずに情報漏洩、機密流出、人材離散、着手金の支払い負担等といった「被害・損失だけが残る」のがM&Aの怖いところです。

良い相手に、良い条件で」で売るためには、M&A市場内での「売り方」においても「差別化」の余地がないかを考え抜いてみることが重要です。

誤解されている方が多いのが「良い条件で売る方法」です。おそらく会社の価値が一般的な消費財と同じく「一物一価」と勘違いされているからでしょうが、会社の価値は、「バイサイド(買い手)にとっての経済的価値以下」であればいくらでもよい(極端な話、1兆円でも0円でも、双方が納得して取引が成立するなら、特に規制もないのでOK、「M&Aに相場はない」と言われるゆえんです)わけです。つまり「一物多価」です。大手会計事務所に「バリュエーション(企業価値評価)」のみを手掛ける専門部隊がいるのは会社の価値はバイサイド企業の意欲と能力次第の「一物多価」だからです。純資産ベースの価格(簿価純資産、時価純資産、純資産+営業利益数年分等)は「一物一価」を前提とした条件で、理論的根拠に乏しく、供給サイド(M&A助言会社)の効率性や収益性の観点で採用されるものです。特に重要なのは「差別化に成功した良い会社にとって、過度に安い評価額になる傾向」がある点でしょう。具体的な安値売り事例やパターンを知りたい方はお問合せください。

一物多寡」の前提で、M&Aで会社を高く売るには、オーダーメイドの投資銀行流の売り方が王道です 。大きく3つに分けられます。

最初の2つが王道です。①スタンドアローン(ターゲット企業単体)のポテンシャル(潜在価値)を正確に把握し、潜在価値を実現できる相手を選び抜き、その潜在価値の存在と実現方法について納得してもらうという方法と、②グループ全体(ターゲット企業とバイサイド企業の連結ベース)でのシナジー効果(相乗効果)を事前に想定し、もっとも大きなシナジー効果が期待できる相手を選び抜き、そのシナジー効果の存在と実現方法について納得してもらうという方法です。当然、できれば両方を同時を実行すべきです。投資銀行で案件主担当者になるには、最低7年の投資銀行流M&Aアドバイザリーの経験、MBAや公認会計士の資格などが要求されるのは、このように簡単な仕事ではないからです。

最後の1つが、③騙して高く売りつける(チート戦略)ですが、M&Aでのチート戦略は実質的に不可能で、これを推奨するM&Aアドバイザーはクライアントファーストではありません。なぜならレプワラ・インデム(表明保証と補償)によって、セルサイドオーナー(売り手)が受け取った超過売却額は短期間で回収され(返金義務)、M&Aアドバイザーだけが超過売却額に対する成功報酬を獲得できるからです 。

ところで、④「とにかく多くのバイサイド候補(同業を中心に100社以上など)に、僅かな情報しか頭に入っていないM&Aアドバイザーが電話やチャットやメールや訪問等で打診しまくる」は、画一大量処理型のM&A助言会社の「早く売る」ための手段であり、「高く売る」ための手段ではありません。「早く売らないといけないセルサイドオーナー」だけ採用すべき選択肢でしょう。

M&A助言会社選びは、「創業社長の人生の評価そのもの」に大きな影響を与えます。慎重に、しっかりと比較して決めてください。テール条項(契約解除後も2年程度の期間、打診先との間でM&Aを実行すると成功報酬の支払い義務が発生、多数のバイサイド候補への打診をするM&A助言会社にとって特に有益な条項)というものがM&A助言会社との業務委託契約に入るのが通常なので、一度決めると途中で変更することが難しく、慎重すぎるくらいが丁度よいです。

弊社の「ユニークな会社を高く売る」というキャッチコピーはよく誤解されますが、実は、バイサイドから感謝されます。「こんなにちゃんとした情報開示をしてくれて、こちらも将来の改善や成長を見越して安心して買収できる」と。最初の2つの方法(ポテンシャルとシナジーの存在と実現方法の証明)を妥協せず徹底しているからでしょう。

ターゲット企業タイプ別の正しい売り方(画一大量処理かオーダーメイドか)

ターゲット企業が生き残ってきた競争スタイル次第で、「画一大量処理型の売り方」がフィットする会社なのか、「オーダーメイド型の売り方」がフィットする会社なのか、が概ね決まります。

もし、ターゲット企業が、規模も小さく(零細企業)で、特徴が全然ない(平凡な)会社で、セルサイドオーナーのニーズが「せめて廃業だけは避けて従業員の居場所を残したい」であれば、現実的に選択肢は絞られます。画一大量処理型の売り方が本当に望ましい売り方かどうかは置いておいて、画一大量処理型の売り方しか選択肢がありません。できるだけ費用が安く、確実に売れそうな方法を選ぶべきでしょう。自分で相手を探して交渉できるネットマッチングタイプのM&Aマッチングサービスを検討されてはいかがでしょうか?高い費用のわりに薄いサービスのM&A助言会社が増えていますので、複数のM&A助言会社に色々と質問をぶつけて納得のいく先に依頼すべきです。

一方で、ターゲット企業に一定程度の規模があり(目安としては調整EBITDAが1億円以上、できれば2億円以上の中堅中小企業)、ユニークな強み(差別化戦略で成功)があるのであれば、「画一大量処理型」は絶対に避けるべき(純資産ベースの評価額に誘導される危険が高く、1人の担当者が同時に多数の案件を扱うため放置されるリスクも高く、でもテール条項(二重成功報酬リスク)の縛りが厳しくて乗り換えもできず、バイサイド選びとバイサイドへの提案の品質が伴わないため)です。「オーダーメイド型の売り方」を選びましょう。丁寧に「人の行く裏の道」を歩んで「花の山」にたどり着くべきです。それだけの価値ある会社を育成されたのですから。

良い相手に、良い条件で売れるのは、「良い会社」だから

良い相手に、良い条件で売りたい」はセルサイドの欲求(ニーズ)ですが、取引を成立させるには相手の合意が必要です。「良い条件で買うなら、良い会社であることが絶対条件」がバイサイドの当然の思考回路でしょう。

つまり、M&A市場に参加する直前までに、「良い会社に映る状態にしておく」ことは「良い相手に、良い条件で売る」ための必要条件です。「伝わってなければ、無いのと同じ」だからです。M&Aアドバイザリーサービスの本質は「情報の精製と伝達」です。この本質以外は、実はオマケに過ぎません。

良い会社」の必要十分条件とは何でしょうか?必要条件として「差別化に成功している」が挙げられますが、それだけでは「良い会社」として不十分です。「重要な問題がない」が「良い会社」の十分条件になります。

ところで「差別化に成功したターゲット企業を売る場合の正しい売り方」である「オーダーメイド型の売り方」、つまり投資銀行流のM&Aアドバイザリー・サービスは、主に大企業や大事業を売る際の売り方です。そもそも、投資銀行が相手にするターゲット企業は、すでに上場しているか、それに類似するレベルの会社が大半です。そのため、大企業なら通常備わっている機能は備わっていて、大企業に通常ない問題はすでに対処済みの会社が、投資銀行の扱うターゲット企業になります。つまり「重要な問題がないターゲット企業を扱うのがノーマルな投資銀行のM&Aアドバイザリーサービス」と言えるでしょう。

しかし、未上場オーナー系中堅中小企業の場合そうはいきません。ガバナンス、組織、テクノロジー対応、伸びしろ放置、財務会計、管理会計、個人と法人の税金問題、バックオフィス、コンプライアンス、ディスクローズなど、「バイサイドからすると、買う気が失せる、値引きしたくなる原因」があちこちに眠っているのがノーマルです。なぜなら、(借入先の銀行と)税務署しか、外部の目を気にする必要がないからです。半パブリックになる以上、最低限の準備をしておかないと、モッタイナイことになるわけです。

そのため、中堅中小企業を「良い条件で」売るためのサービスとしては、投資銀行流M&Aアドバイザリー・サービスは、少し物足りなくなります。M&Aアドバイザリー部隊が大組織の投資銀行に所属している場合は特に、短期間の高水準ノルマに追われていたり(売上100億円~、できれば500億円以上のターゲット企業のみ等)、業務範囲に関する監督官庁による規制の存在(助言内容に制限)等が、「中堅中小企業を良い条件で売るために本当に必要なサービス」(=幅広い売却前の経営改善コンサルティング)の提供を阻みがちなので、「わかっていても、できない」わけです。

こうなると独立系の投資銀行流M&Aハウスに目を移す必要があります。

弊社(SCA:シェルパ・キャピタル・アドバザリー株式会社)が、「ユニークな会社を高く売る」ためにどのような付加価値サービスを提供しているのかをご紹介させてください。弊社の「差別化戦略」の1つです。

弊社代表が投資銀行を退職して独立し、「セルサイド特化型FAサービス」と「企業価値向上コンサルティングサービス」の二枚看板で、「ユニークな会社を高く売ることに集中する差別化戦略」を採用したのは、後者の「企業価値向上コンサルティングサービス」を同時提供することが、セルサイドオーナーのニーズを最大限に実現する最良のサービスセットであるという確信があったためです(事実、創業後5年強経過してますが画一大量処理型のM&A助言会社の想定売却可能額の3~5倍(平均)、10倍(最高)という成績を出し続けられたのは、この「企業価値向上コンサルティングサービス」を同時提供する弊社独自のサービスプランがあればこそと自己評価しています。

企業価値向上コンサルティングサービス」を例えるならば「50日プラン」です。

投資ファンド(フィナンシャルバイヤー)のうち、ハンズオンで経営改善能力の高い投資ファンドは、投資実行後、「100日プラン(または100日委員会)」という課題の整理と施策の立案と欠陥治癒等のテコ入れを、100日間という短期間で一気に概ね方向性をつけて、解決できるものは解決してしまいます。外部から新オーナーが登場して、社内に「変化というストレス」を与え続けるのは3カ月程度が限界という点と、大半の企業に眠る課題発見と施策考案と欠陥治癒は、100日もあれば通常目処が立つからです。既存投資先とグループ化する「ロールアップ」の場合には、シナジー効果の実現施策も実行します。バイサイドが事業会社(ストラテジックバイヤー)の場合も、同様に、短期間での統合処理(PMI)が実行されます。これは事業会社の姿勢次第で、1年以上かけてしまうケースも多々あります(M&A実行自体が目的化してしまう場合等)。

この「100日プラン」は、バイサイドが特定され、バイサイドの内情を知る者しか実行できませんので、弊社が提供できるのは、半分の「50日」で、「スタンドアローン(単体)で、そのままで売るとモッタイナイこと」と「シナジーという電流がスムーズに流れるような配線整備」を、あらゆる角度から、できることは全て、実行サポートするサービスです。企業価値評価(バリュエーション)の観点から各種改善施策等を立案・実行支援することに徹するので、施策の効果が早く、大きく企業価値に反映されるものを優先する取捨選択が可能となり、M&Aでの評価にダイレクトに反映される点が、一般的な経営コンサルティング会社と視点と目的が異なるわけです。

ネックは「50日前後の日数分、クロージング日が遅れること、少し負担のある前向きな準備をしないといけないこと」です。つまり「1-2カ月遅くなっても、ワクワク準備して、最終的な結果を重視したい」というセルサイドオーナー様に特にオススメできる会社売却プランです。

ぜひ、人の行く裏の道を見つけて、花の山にたどり着いてください。

☆ 月間人気記事ランキング ☆

    • M&Aバリュエーションの最高峰 | DCF法の基礎と限界
      まず、現実の値決め(腹から欲しい度)と理論的なM&Aバリュエーション(完璧なDCF法含む)は同じものではありません。 どんなに精緻なM&Aバリュエーションをバイサイド(買い手)に提示しても、実際の値決め(売却価格)が...

       

    • 知っておくべきM&Aプロセス(株式譲渡のケース)
      M&Aで一番多く利用されるスキームが「株式譲渡」です。これからM&A会社売却をしようとするセルサイドオーナー(売り手)は、株式譲渡の手続き(プロセス)の基本形だけでも頭に入れておきましょう。 M&Aプロセスの...

       

    • M&Aで最高値で売る義務「レブロン基準」とは?
      今回は、M&Aで会社経営権を第三者に譲渡する場合に「堂々と最高値での会社売却を目指してよい理由」をご説明します。 また、この当然の権利が失われやすい背景をご説明しつつ、とはいえ、現実問題として、相手が納得しないとお金は出てこ...

       

    • 銀行に評価される会社が高く売れるというのは本当か?
      M&Aという取引は、「ターゲット企業(売り手企業)の経営権を売買する取引」です。 経営権を具体化するのは株式ですから「株式(エクイティ)市場」に属するものであることが大前提です。 銀行ローンが属する「信用(クレジット)...

       

    • 投資銀行の肩書って意味不明ですよね
      投資銀行では、若い青年なのに副社長(ヴァイス・プレジデント)などという肩書を持つ人がたくさんいます。副社長よりもディレクターの方が偉いというのも日本人としては不思議な感覚です。 今回は投資銀行のタイトルの上下関係と個々タイトルに求めら...

       

    • 会社の売却理由として「良い理由」と「悪い理由」
      今回は、M&Aの目的を「好条件での売却」に設定する場合の売却理由として、どんな理由が「良い理由」、どんな理由が「悪い理由」に聞こえやすいか、そして、売却理由の聞こえ方次第で「創業者利潤にどんな影響」が生じるのか、を説明させていただ...

       

    • 「同業他社に売りたくない」はM&A会社売却で不利になる?
      オーナー社長は、数十年といった長期間、競合他社(同業)と凌ぎを削って、ときに不快な思いをしつつ、ときに競争心を成長の糧として、なんとか生き残り、少しでも事業を拡大すべく努力を継続し、いくつもの壁を乗り越えてきたはずです。 特に、知恵...

       

    • M&Aにおける双方代理リスク
      双方代理リスクとは? 双方代理は原則禁止 双方代理は民法108条で原則として禁じられており、例外的に両当事者(本人)が事前に了解している場合にのみ許容されます。M&Aで会社売却を検討するセルサイドオーナー(売り手)は、...

       

    • アーンアウトと逆アーンアウト
      2019年に企業会計基準第21号「企業結合会計基準」が改正されました。「対価が返還される条件付取得対価の会計処理(逆アーンアウトの会計処理)」が今まではっきりしていなかったため改正されたようですから、なぜか会社売却の対価として受領したキャ...

       

    • M&A会社売却の破談リスク:COC条項とは?
      チェンジオブコントロール条項(COC条項:Change of Control条項)とは、M&A会社売却を実行することで、経営権(支配権:Control)が、今までのオーナー(売り手:セルサイド)から、第三者(買い手:バイサイド)に...